2017 Fiscal Year Annual Research Report
自己集積型有機半導体ナノヘテロ構造の設計・創製・機能開拓
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17H07363
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川畑 公輔 東北大学, 理学研究科, 助教 (10710212)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | ナノ構造制御 / 有機半導体 / 液晶 / 有機電子デバイス / 光電変換材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、異種有機半導体からなるヘテロ構造の構築およびその界面の自在設計を目的として、スメクチック液晶相形成に基づく新しい自己集積型有機半導体材料の開発に取り組んでいる。本研究の分子設計において、まず溶液プロセスおよび半導体の分離積層構造の形成を可能にする側鎖の選択が重要となる。昨年度、前述の可溶性置換基として、オリゴエーテル鎖が縮環型の剛直な半導体骨格に対しても、有機溶媒への高い溶解性を付与させる良好な置換基であることを確認している。一方で、オリゴエーテル鎖を多段階合成の初期に導入した場合、その後の反応の選択性および収率の低下、精製の困難等の問題があったため、これらの置換基を多段階合成の終盤に導入するルートを検討した。その結果、有機半導体骨格分子の臭素化物とオリゴエーテル鎖を有するアルキルGrignard試薬とのクロスカップリング反応によって、パイ拡張された剛直な半導体分子骨格(例えば、[1]Benzothieno[3,2-b][1]benzothiophene, [1]benzothieno[3,2-b]naphtho[2,3-b]thiophene)であっても、容易にオリゴエーテル鎖を導入することが可能であった。本ルートは、共通の合成中間体に対して、合成終盤で側鎖を導入できることから、構造物性相関を調べるための分子ライブラリーを効率的に作製するうえで重要となる。今後はまず、これらを両末端または片末端に有する分子について、合成および相転移挙動や構造のキャラクタリゼーションを行い、高次スメクチック相の発現させる分子設計指針の探索を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度は、申請者の研究機関移動、また移動先での研究環境整備のため、予定していた研究計画に遅れが生じている。当初、初年度に予定していた、1)高次スメクチック相を形成する異種半導体連結分子の分子設計指針の探索、および、2)柔軟な末端鎖・連結鎖および剛直な半導体ユニット(メソゲン)の化学構造やその組み合わせが相挙動に与える影響の調査、の二点について、まだ十分な知見が得られていない。これらの点について、本年度も引き続き調査を行う必要があるため。 一方、可溶性置換基として、オリゴエチレングリコール鎖が高い溶解性を付与させるのに良好な置換基であることを見出しており、これらの半導体骨格への効率的な導入方法については確立できた。
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Strategy for Future Research Activity |
1)高次スメクチック相を形成する異種半導体連結分子の分子設計指針の探索、および、2)柔軟な末端鎖・連結鎖および剛直な半導体ユニット(メソゲン)の化学構造やその組み合わせが相挙動に与える影響の調査、の二点について、まだ十分な知見が得られていないため、これらの点について、本年度も引き続き調査を行う。本研究において鍵となる、分離積層構造を形成するためのp型およびn-型有機半導体骨格としては、良好な電荷移動度を示すことが報告されている、ベンゾチエノベンゾチオフェンやオリゴチオフェン、またナフタレンおよびペリレンテトラカルボキシジイミドおよびその類縁骨格に焦点を絞り検討する。昨年度において、可溶性置換基として、オリゴエチレングリコール鎖が高い溶解性を付与させるのに良好な置換基であることを見出しており、また、半導体骨格への効率的な導入方法についても確立できていることから、これらを両末端または片末端に有する分子について、合成および相転移挙動や構造のキャラクタリゼーションを行い、高次スメクチック相の発現させる分子設計指針の探索を行う。以上の点については、本年度の前期に取り組む予定である。 本年度の後期においては、合成した分離積層構造を有する異種有機半導体連結分子が形成するヘテロ界面の機能について、分光法や光電変換デバイスを用いた評価法により、その分子構造(p-およびn-型半導体のHOMO/LUMOや光学吸収帯や連結鎖の長さ)、固体構造(積層構造や層構造内の二次元分子間相互作用)、および界面機能(電荷分離やエネルギー移動)の相関について明らかにする。得られた知見を基に、本研究で提案する分子設計および半導体ナノ構造を用いて、高効率なエネルギーデバイス等への応用の可能性を検討する。
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