2017 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of early placental formation mechanism using placental hypoplasia models
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17H07367
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
三浦 健人 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソースセンター, 特別研究員 (70802742)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 胎盤 / 核移植 / 栄養膜細胞 / 発生工学 / キメラ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、マウス胎盤低形成モデルにES細胞を注入し作製したキメラ胚を、組織学的・分子生物学的に解析ことで、初期胎盤の栄養膜細胞の増殖と分化の制御メカニズムを解明することを目的としている。 申請者は今年度の研究において、クローン胚盤胞に、正常なES細胞 を注入することで、「正常なES細胞由来の胎仔」と「クローン胚の胎盤」から構成されるキメラ胚を作製することに成功した。胚盤胞への注入には、GFP (緑色蛍光タンパク質) を発現するES細胞を用いた。採材の際にキメラ胚を子宮から分離し観察した所、胎仔組織でGFP蛍光が見られたため、ES細胞の胎仔組織への寄与が確認できた。 実際に、そのキメラマウス胚の組織切片を作製した。抗GFP抗体を用いて免疫染色を行った結果、胎盤は染色されず、胎仔組織のみ特異的に染色されることが確認できた。ただ、子宮から分離した胚を用いて作製した組織切片では、子宮からの分離に伴い組織が物理的に障害され、正確な組織構造の評価が困難であった。今後は、胚を子宮から分離せずに固定および包埋し、作製した組織切片を解析する。ES細胞の胎仔組織への寄与は、GFP蛍光そのものではなく、抗GFP抗体を用いた免疫染色で行う。 また申請者は、未分化な栄養膜細胞で構成されるTPBPA陽性の胎盤領域が、体外受精胚と比較してクローン胚で減少していることを明らかにした。このTPBPA陽性の領域面積を指標に、キメラ胚での胎盤形成を評価できると考える。 クローン胚の作製には、マウス卵を人為的に活性化させる必要がある。申請者は、マウス卵を活性化させる新たな技術の開発を行った (Miura et al., Journal of Reproduction and Development, 2018)。この技術を用いて、クローン胚およびキメラ胚を効率的に作製することも検討したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は今年度の研究において、初期胎盤の低形成モデルであるクローン胚盤胞に、正常なES細胞 を注入することで、「クローン胚の胎盤」と「正常なES細胞由来の胎仔」から構成されるキメラ胚を作製することに成功した。胎仔組織へのES細胞の寄与も、GFP蛍光の観察および抗GPF抗体を用いた免疫染色で確認できた。キメラマウスの作製は、本申請において最も重要かつ困難が予想された過程であり、この成功により、今後の研究がより一層進展することが期待できる。 本年度の研究で、子宮から分離したキメラマウス胚は、その組織が物理的に障害され、胚を用いると、切片での正確な組織構造の評価が困難であることが分かった。今後は、胚を子宮から分離せずに採材、固定、包埋および薄切し作製した組織切片を解析する。申請者は、通常の受精胚およびクローン胚を用いて、胚を子宮から分離せずに切片を作製することに成功しており、その技術を用いてキメラ胚の切片も作製できる。また、今までGFP蛍光を指標に行っていた、胎仔組織へのES細胞の寄与の評価は、子宮ごと胎子を採材した場合には困難になる。そこで、今後は作製した組織切片に対して、抗GFP抗体を用いて免疫染色を行うことで、ES細胞の胎仔組織への寄与を評価する。 組織学的解析に用いる栄養膜細胞を特異的に染色する抗体 (TPBPA, PLF, PL1, etc.) の特異性も、通常の受精卵胚およびクローン胚を用いて確認した。その中で申請者は、未分化な栄養膜細胞で構成されるTPBPA陽性の胎盤領域が、体外受精胚と比較してクローン胚で減少していることを見出した。今後、TPBPA陽性領域の面積を指標に、キメラ胚の胎盤形成が評価できると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、今年度作製に成功した「クローン胚の胎盤」と「正常なES細胞由来の胎仔」から構成されるキメラ胚の胎盤を組織学的に解析することで、ES細胞由来胎仔が、クローン胚の初期胎盤構造の形成に与える影響を明らかにする。また、着床率・出生率の低下が報告されている通常のクローン胚と比較して、このキメラ胚の着床率・出生率が向上するか検証する。これらの実験から、クローン胚で見られる胎盤低形成や着床率・出生率の低下の原因が、「胎盤を構成する栄養膜細胞(内因性)」にあるか「胎仔性因子(外因性)」にあるかを明らかにし、胎盤形成メカニズムに関する新たな知見を得る。 具体的には、キメラ胚 (胎齢9.5日前後) を子宮から分離せずに固定および包埋し、組織切片を作製する。免疫組織化学や各種組織染色を行い、キメラ胚胎盤の組織構造やタンパク質局在を明らかにする。ES細胞が胎仔組織に寄与していることを確認するために、抗GFP抗体を用いた免疫染色を行う。また、特定の分化段階にある栄養膜細胞を特異的に染色する抗体 (TPBPA, PLF, PL1, etc.) を用いて、キメラ胚胎盤の機能に関する知見を得る。申請者は今年度の研究で、未分化な栄養膜細胞で構成されるTPBPA陽性の胎盤領域が、体外受精胚と比較してクローン胚で減少していることを見出した。キメラ胚においては、このTPBPA陽性の胎盤領域が、対照群である通常のクローン胚と比較して増加することを期待している。 また、キメラ胚の着床率および出生率を調べるために、偽妊雌に移植したキメラ胚盤胞数に対する着床痕数および産子数を計数する。通常のクローン胚の着床率は~20%、出生率は~5%であり、キメラ胚においてこれらの率が改善することを期待している。
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Research Products
(2 results)