2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17H07370
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
吉田 英行 国立研究開発法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, 上級研究員 (80800523)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 自己免疫寛容 / 遺伝子発現 |
Outline of Annual Research Achievements |
自己免疫寛容を形成、維持する代表的な機構の一つが、リンパ球の負の選択である。胸腺では種々の末梢組織特異的遺伝子(peripheral tissue antigen : PTA)が発現されており、これらに反応する自己反応性のリンパ球は胸腺内で除去される。PTAの発現異常は自己免疫疾患を引き起こすことが知られており、その発現調整のメカニズムの解明は自己免疫疾患の病態解明や、新規の治療方法の確立に向けて重要であると考えられる。私はデータベースを用いた網羅的解析より、Zfp36l1, Zfp36l2がPTA発現調整に関わるとの仮説を導き出し、本課題では、その立証をすべく、これら分子の機能解析を進めている。 Zfp36l1, Zfp36l2はRNA結合タンパク質であり、特定の配列を持つmRNAを分解に導くことが知られているが、これまでの研究では主にサイトカイン遺伝子等の発現調整に焦点があてられており、ターゲット遺伝子の全体像は不明であった。そこで、ターゲットmRNAを網羅的に調べる目的で、これら遺伝子を過剰発現あるいはノックダウンさせ、それに伴うRNAの変化をRNA-seqにより調べたところ、2倍以上の発現変化が、数千の遺伝子において検出された。PTAを誘導する因子としては転写因子AIRE (autoimmune regulator)が既知であるが、これらZfp36l1, Zfp36l2のターゲットとなる遺伝子の中には、AIREによって誘導される遺伝子と、誘導されない遺伝子の両方が含まれていた。 以上の結果は、mRNAの安定性のコントロールにより、幅広い遺伝子がコントロールされ得ることを示し、また、Zfp36l1, Zfp36l2 単独での機能とともに、Aireと協調的に作用する可能性を示唆すものであり、PTA発現調整にこれらが関与する可能性を高めるものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究室の立ち上げに伴い、細胞生物学や分子生物学の各実験系を立ち上げる必要がある環境下において、遺伝子発現を変化させた細胞の準備とRNA-seqによる網羅的遺伝子発現解析を約半年で完了することができ、ほぼ当初の予定通りの進捗状況と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
自己免疫寛容は免疫系の様々な細胞により構成されるため、本課題ではマウス生体を用いた研究が必要不可欠である。今後はCRISPR-Cas9を用いたゲノム編集技術を利用し、マウス胸腺細胞でZfp36l1, Zfp36l2 の遺伝子発現が操作されたマウスを作製し、これら遺伝子の生体内での機能を解析する。
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