2017 Fiscal Year Annual Research Report
シンチレータと光ファイバを用いた熱・速中性子、ガンマ線リアルタイム検出器の開発
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17H07377
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
小川原 亮 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 加速器工学部, 博士研究員(任常) (00807729)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | シンチレータ / 光ファイバ / パルス波形弁別 / 熱中性子束 / 速中性子線量 / ガンマ線線量 |
Outline of Annual Research Achievements |
一般的に熱中性子場には速中性子とガンマ線が混在し、また加速器中性子源の様な大強度中性子場では放射線検出器の読み出し回路部を照射野近傍に設置することが困難である。本研究では光ファイバの先端にシンチレータを装着した Scintillator with optical fiber (SOF)検出器に、信号波形から入射粒子を同定するPulse shape discrimination (PSD)解析を実装した検出器の開発を目的としている。PSD解析を実装したSOF検出器は理論上リアルタイムで熱中性子束・速中性子線量・ガンマ線線量を同時に評価することが可能である。 本年度は先ず必要な検出器材料と実験装置の選定・収集を行い、検出器開発の準備が完了した。また、それらと並行しGeant4 Monte Carlo Codeに可視光輸送計算コードを実装し、光ファイバのシミュレーションを行うことで開発する検出器に要求される光ファイバの性能を明らかにした。 作成した検出器は熱中性子束・速中性子線量・ガンマ線線量の校正を行う必要がある。本研究では放射線医学総合研究所のNASBEE中性子照射施設を利用しており、本年度は先ずこれらの校正用の検出器評価を行った。熱中性子束は金箔とCdを使用した放射化法による評価を行い、ガンマ線線量は速中性子感度の低いOptically stimulated luminescence(OSL)線量計を使用した。また、電離箱は速中性子とガンマ線の両者に感度があるため、OSL線量計と電離箱をCo-60照射装置で校正し、電離箱とOSL線量計で得られた線量を減算することによって速中性子線量を測定した。これらの測定によって校正時に必要な情報の取得方法が確立された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では本年度で従来型のSOF検出器で使用しているステップドインデックス光ファイバ(光ファイバのコア内の屈折率が離散的に分布)とグレーデッドインデックス光ファイバ(光ファイバのコア内の屈折率が連続的に分布)の2種類を用いて検出器を作成し性能評価を行う予定であった。前者では光ファイバ内の輸送時間にばらつきが生じ測定精度を低下させるが、後者は信号波形の時間情報を保存できるためより高い精度でパルス波形弁別が可能である。 先ず本年度はGeant4 Monte Carlo simulation によって可視光輸送シミュレーションを行い、ステップドインデックス光ファイバを使用した場合におけるパルス波形弁別精度を評価した。これらの計算結果から、ステップドインデックス光ファイバを用いた場合2.4 m 程度の長さでガンマ線と速中性子のイベントが弁別不可能であることが示された。実際の加速器中性子場では10m以上の長さで十分な測定精度を達成する必要があり、開発する検出器においてグレーデッドインデックス光ファイバの必要性が示された。また、本研究では申請者が開発したPeak-to-charge discrimination (PQD)法によるパルス波形弁別解析を実装予定であり、シミュレーションによってPQD法は従来法であるCharge comparison法よりも高いパルス波形弁別能が得られることを示した。 本年度では予定していた検出器の作成には至らなかったが、可視光シミュレーション体系の確立と、そのシミュレーションコードを用いて要求されるファイバの性能を明らかにできた。また、開発した検出器の校正方法を実験的に確立し研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、先ずは前年度のシミュレーション結果を踏まえたSOF検出器の作成と性能評価を最優先とする。開発したSOF検出器を用いた測定では熱中性子束・ガンマ線線量・速中性子線量を評価するための校正用検出器と同時に測定を行い、校正用検出器との線形性を解析する。一方NASBEE中性子照射施設では、Be標的にproton もしくはDeuteron を照射し中性子場を提供しており、前者は2 MeV以下、後者は10 MeV 以下の速中性子を発生させる。作成したSOF検出器がどちらの中性子場でも問題なく使用できるか調べるため、性能評価は両者の中性子場で行う。 一般的にデジタルパルスのパルスサンプリングレートが低下すると、パルス波形弁別の精度も低下する。したがって、開発したSOF検出器のデジタル波形データを解析的にダウンサンプリングし、十分なパルス波形弁別精度が達成できるパルスサンプリングレートを明らかにする。これらの結果から、Flash ADCとFPGAを用いたリアルタイム波形解析回路に必要な性能を評価し、解析ボードの発注を行う。
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