2017 Fiscal Year Annual Research Report
炭質物を利用した新しい地質温度圧力速度計の開発と地球科学への応用
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17H07395
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
中村 佳博 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究員 (60803905)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 炭質物 / 低温変成作用 / 石墨化 / 高温高圧実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、付加体や弱変成岩に含まれる「炭質物」を利用した新しいタイプの温度圧力速度計の開発とこのマーカーを利用した地質構造の解析を目指した.この目的達成のために1)野外地質調査と2)サファイアアンビルセルとマルチアンビルを用いた高温高圧実験から炭質物の結晶構造進化の素過程の解明を目的に研究を継続している. 1)野外地質調査では、長野県大鹿村地域に分布する付加体から弱変成岩の変成作用と変形作用の詳細な議論をおこなっている.これまでに65日以上の調査を実施しており,300試料以上の変成岩と断層岩を採取し研究中である.現在は変成鉱物の基礎的な記載と分析から温度圧力条件を推定し,同時に産する炭質物の結晶構造の指標と比較を行っている.この調査の中で新たに中央構造線の新露頭を4個所発見し,それぞれで詳細な構造データの取得と断層岩のサンプリングを行うことができた.また採取した変成岩や断層岩に関しても分析も順調に行っており,今後実験で使用できる炭質物を抽出し実験との比較に利用したい. また同時に天然炭質物を利用した2)その場反応速度実験と従来の高温高圧実験を実施した.従来のマルチアンビルを用いた高温高圧実験に関しては三朝の惑星物質研究所にて実験を行い活性化体積を求めるために必要な実験数を達成することができた.今後微細構造の観察とXRD/顕微ラマン分光分析も含めてデータをまとめ論文を今年度中に提出する予定である.サファイアアンビルセルに関しては,今年度の2月末に納入されたため本格的な実験に至っていない.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,新しく始める高温高圧実験のためのサファイアアンビルセルに関する基礎的実験を中心に研究を行うことができた.これまでに工作を依頼したシンテックでの打ち合わせ(10月中旬)と実際に運用している研究室への訪問(11月と12月)と事前実験(12月末)を行い,実際に購入するセルの選定と設計の変更を12月までに実施した.ただし外熱式のセルを別設計で作成していただいたので納入まで時間がかかってしまい今年度は必要な実験装置を揃えるだけで期間が終わってしまった.また想定よりもサファイアアンビルが圧力発生で容易に破損することがわかり,適切なcuret径と台座の選定が必要であることが明らかになった.今後この問題を解決し~4GPaの圧力発生時に加熱ができるように調整を行っていきたい. 従来のマルチアンビルを用いた高温高圧実験に関しては三朝の惑星物質研究所にて実験を行い活性化体積を求めるために必要な実験数を達成することができた.今後微細構造の観察とXRD/顕微ラマン分光分析も含めてデータをまとめ論文を今年度中に提出する予定である. 産総研の1/50,000地質図幅に関する業務の関連で行っている長野県大鹿村地域における野外調査は順調に調査が進展しており,昨年度は65日以上の野外調査を実施することができた.採取した試料に関しても変成鉱物の基礎的な記載と分析から温度圧力条件を推定し,同時に産する炭質物の結晶構造の指標と比較を行っている.これらの研究実施状況から概ね順調に研究が進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も昨年度同様に1)野外地質調査と2)サファイアアンビルセル・マルチアンビルを用いた高温高圧実験から炭質物の結晶構造進化の素過程の解明を目的に研究を継続する. 1)野外地質調査に関しては,昨年度同様に60日以上の野外調査を予定しており,1/50,000全域の地質図を完成させることを目標としている.採取した試料に関してはすでにEPMAによる鉱物組成分析, マイロナイトのEBSDによる結晶方位解析, SEMによる断層岩の微細組織観察などの行っている.また岩石中の炭質物に関してもXRD・顕微ラマン分析とSEM, TEMによる微細組織の観察を同時に行っていきたい.これらの研究成果に関してもできるだけ早い時期に論文化を目指し研究を継続していく. 2)高温高圧実験に関しては実験試料の分析が終わっていない試料に関して早急に分析を行い,早期の論文化を目指す.同時に昨年度購入したサファイアアンビルセルの運用を開始する.これまでに行ってきた事前実験の反省を生かしよりcuret径の小さいサファイアアンビルで角度も調整したものをシンテックに注文中である.また台座の内径を小さくしたものも注文予定であり,より高圧の温度圧力条件にて炭質物の実験を行いたい.今年度からは東大の鍵研究だけではなく,NIMSの超高圧セミナーにも訪問するようになりNIMS超高圧グループの方にも助言をいただきサファイアアンビルセルの実験を行っていきたい.
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