2017 Fiscal Year Annual Research Report
交流ハーマン法の高精度化と単結晶の熱電物性精密評価への応用
Project/Area Number |
17H07399
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
大川 顕次郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究員 (80805119)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 熱電効果 / 交流ハーマン法 / 単結晶 / 精密計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
材料探索において,新物質の物性評価は単結晶を用いて行われるが,微小試料では一般的にゼーベック係数や熱伝導率評価は困難となる.本研究では,単一試料の交直流電気測定から熱電性能指数zTを一括評価可能な交流ハーマン法の高精度化を目指している.交流ハーマン法におけるzTの評価式は,電流印加により試料端に生じたペルティエ熱がすべて試料に流れ込む理想的な断熱環境を仮定しているが,実際の測定環境では様々な熱損失が生じるため,正確なzT評価のためには熱解析による補正項の導入が必要となる.我々は,正確な試料内の温度分布に加え,これまで考慮されてこなかったイントリンシックなトムソン効果を取り入れた熱伝導解析を行い,新たな熱補正項を導いた.さらに交流ハーマン法による評価装置を開発して補正項の実験実証を行うことを目標としている. 本年度は、まず熱伝導解析によりトムソン熱,ジュール熱,リード線の熱伝導,熱伝達等の熱損失による新たな補正項を導出した.さらに各補正項の実証のため,冷凍機システム内に精密温度制御可能な交流ハーマン法を用いた評価システムを構築した.試料端への十分な電極接触,試料径を抑えたリード線による空中配線,試料空間を覆う輻射シールドを実装する等,試料の断熱環境を考慮した.予備実験として,(Bi,Sb)2Te3バルク試料を用いた評価実験を行い,熱伝達の影響を検証した.分子流領域に達する10-2Pa以下の圧力領域においては,分子同士の相互作用が小さくなり,熱伝達を担う分子が減少することで熱損失が軽減されるため,交直流電圧差は大気圧下に比べ室温で50%以上増加した.得られた補正項からも示唆される熱伝達の顕著な影響を確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に行った熱伝導解析により得られた新たな補正項は,トムソン効果や熱伝達等を考慮した,より正確な試料内温度分布を反映している.次の目標は補正項の実験実証であるが,実証のための評価システムは本年度内に構築し,準備段階を完了した.熱伝達による熱損失に引き続き,次年度にトムソン熱等による補正項の実証を行うことで,交流ハーマン法の高精度化を達成する.また,主題の単結晶試料評価への適用に加え,モジュール構造の試料に対する評価も見据えており,本年度にはモジュールの絶縁基板による熱損失の影響の定量的評価も同時進行で行った.
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Strategy for Future Research Activity |
トムソン熱による補正項はリード線の取り付け位置のずれに依存する項であるため,本年度構築した評価システムを用いて実証を行う.試料形状やリード線の径等,実証の際に考慮すべき項目は多くあるため,最適な測定環境の検証が必要である.そのうえで,一般的なzT評価技術と比較した測定精度を検証することで,熱電材料の高精度評価への可能性を検証する.バルク材料のみならず微小単結晶試料の評価を行い,新規熱電材料探索技術へ応用可能な評価手法として研究を推進する.
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Research Products
(2 results)