2017 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジア地域における環境低負荷型の地域発展を目指した資源開発由来の水質汚染対策
Project/Area Number |
17H07401
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
松本 親樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究員 (00803925)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 東南アジア / 石炭燃焼灰 / 有機材料 / AMD / 覆土層 / 土壌侵食 / 植物生育 |
Outline of Annual Research Achievements |
インドネシアをはじめとする東南アジア諸国は著しい経済発展を遂げているが、その一方で、有機材料 (Empty Fruit Bunches: EFB等)や石炭燃焼灰 (Fly Ash: FA)等の産業廃棄物の増加が問題となっている。さらに、主要なエネルギー資源の一つである石炭の開発は拡大し、鉱山開発に起因する酸性鉱山廃水(Acid Mine Drainage: AMD)の環境問題が深刻化している。そこで本研究では、インドネシアにおいて地域の発展に伴い発生する有機材料およびFAを有効利用することにより、資源開発に起因して発生するAMD問題を抑制する新たな対策を考案するために、鉱山現場における調査と室内試験を実施してきた。 これまで実施された研究結果より、有機材料とFAを「覆土層」と呼ばれる遮蔽壁に併用することで効果的にAMDを抑制することが可能であると示された。しかし、過去の研究の文献調査と試験結果を併せて考えると、石炭の品質によりFAの特性が多岐にわたるため、それらの影響に関しても併せて検討すべきであると示唆された。また、それらがAMDの抑制に与える影響よりも、適用土壌(覆土層)の性状に与える影響に注目すべきことやAMD以外の問題(植生への影響や土壌侵食)を引き起こす可能性があることが示された。そこで、FAや有機材料を鉱山における覆土層に適用したときに生ずるAMD以外の問題に関して、室内試験および試料分析により検討を行った。その結果、FAの粒子形状やFAからのアルミニウム(Al)の溶出が土壌侵食や植物生育に大きく影響することが明らかとなった。今後は、これらの問題も視野に入れた「有機材料とFAを併用した対策」を考案していくとともに、鉱山とその他の機関(産業廃棄物を産出する工場等)の協力体制に関しても検討を行う計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究とカラム通水試験の結果より、有機材料とFAを「覆土層」と呼ばれる遮蔽壁に併用することで効果的にAMDを抑制することが可能であると示され、FAが適用土壌(覆土層)の性状に与える影響に注目すべきことやAMD以外の問題(植生への影響や土壌侵食)を引き起こす可能性があることが明らかとなったことは、FAとEFBを併用するために重要な知見である。鉱山現場における模擬堆積場の建設と覆土層下部への酸素・水分センサーの設置も完了しており(データ回収は次年度)、現場における適用性に関しても方向性が見えているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針としては、文献調査とこれまで得られた結果により、FAの特性とFAに起因する問題に関してまとめるとともに、それらがFAとEFBを併用した覆土層に与える影響に関しても検討を行う計画である。また、鉱山現場における模擬堆積場のデータも併せて、AMD問題を抑制する新たな対策を考案する。さらには、鉱山とその他の機関(産業廃棄物を産出する工場等)の協力体制に関しても言及を行い、地域の発展と環境保全の両立を目指した「環境低負荷型の地域発展モデル」の確立を目指す。長期水質シミュレーションに関しては、FAによる中和作用の持続性以外の問題(FAに起因する土壌侵食や植生への影響)が明らかとなり、それらの議論および解決が優先されるため、次年度中に達成できない可能性がある。
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