2017 Fiscal Year Annual Research Report
聴覚障害幼児児童生徒の作文学習を支援するフォ―マットの開発に関する研究
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17H07411
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Research Institution | National Institute of Special Needs Education |
Principal Investigator |
山本 晃 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所, 研究企画部, 総括研究員 (70804996)
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Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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Keywords | 聴覚障害 / 作文 / 日記 / 語彙力 / フォ―マット |
Outline of Annual Research Achievements |
聴覚障害教育において、日記・作文能力の向上は、語彙力向上とも関連し、大きな課題となっている。本研究は、語彙力も向上させながら作文の書き方を身に付けるためのフォ―マットの開発、そしてその汎用化を図る研究である。まずこれまでの聴覚障害教育における日記作文の先行研究の調査を行った。その際、通常の小学校等における作文指導の方法や課題についても調査を行った。直近の先行研究としては、「聴覚障害生徒が書く文章の特徴について : 多次元項目に基づく作文の分類」(澤,2016)や「聴覚障害児における「書く力」の特徴と評価に関する文献的考察 : 言語学的アプローチと評価尺度の作成に関する研究を中心に」(新海,2016)等がある。 そして、全国の特別支援学校〈聴覚障害〉(以下、聾学校という)教諭に日記作文指導の困難点、指導上の工夫等の調査を実施した。この調査をもとに、日記・作文フォ―マット作成上の示唆となる意見を聴取した。当初の予定では、平成30年3月までに調査結果を分析し、各発達段階別のフォ―マット試案を作成するとなっていたが、予想よりも多くのデータを集めることができたため、現在も結果を分析中である。また、同時進行により、小学部低学年用試作版について、予備的な試行を行っているところである。 この後、幼稚部版、小学部高学年版、中学部・高等部版を作成し、試行を経てフォーマットの改善を図る。 完成後はその成果物や使い方のリーフレットとともに、全国の聾学校に送付し、普及に努める。 本研究により、聴覚障害教育において、言語能力低位層の幼児児童生徒の支援となる日記・作文フォーマットが作成できるとともに、全国の聾学校教諭の日記作文指導の困難点について整理できる。また、アンケートの記述内容から、全国の聾学校教員の指導上の工夫をまとめることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先行研究の調査を終え、そして聾学校の教師に、日記作文指導の困難店、指導上の工夫等の調査を実施した。現在全国調査の結果をまとめ、分析中である。全国調査は81校900名分の調査用紙が回収された。調査結果から次のようなことが把握できた。 まず、「聴覚障害幼児・児童・生徒への絵日記・日記・作文、小論文指導等について、困難さは感じますか。」という質問に対し、とても困難さを感じる、少し困難さを感じるを合わせると、94.2%の教師が困難さを感じるということを把握することができた。 また、先生ご自身の困難さについて尋ねたところ、絵日記・日記・作文指導等のスキル(方法) について困難と回答した教師が677名(75.2%)であった。 そして「幼児児童生徒の言語力が課題」と回答した先生に、どんなことが課題であるか尋ねたところ、生活言語が少ないと回答した教師が533名、学習言語が少ない、自分の考えを表すことができないと回答した教師が480名であった。また、自分の気持ちを表すことができないと回答した教師は458名であった。また、日常の指導において、絵日記・日記・作文・その他の文章の指導で、どのような指導等が大切であるかという質問に対しては、圧倒的に語彙を増やす指導と回答した教師が多かった。(523名)全国の教師の絵日記・日記・作文・その他の文章指導の工夫点についても多くの記述をいただいた。 そして2名の聴覚障害児に小学部低学年用の試案フォ―マットの予備的実践を開始した。今回全国調査の結果、81校900名という当初の予想よりかなり多いデータを回収できたため、やや研究の進捗状況は遅れているが、10月までには遅れを取り戻せる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
調査結果を踏まえ、本年度8月末までに、日記・作文の各発達段階別のフォ―マット試案を作成する。発達段階別というのは幼稚部絵日記版、小学部低学年版、小学部高学年版、中・高等部版である。 そして、本年度9月から11月中旬の間に、研究協力校や研究協力機関において、そのフォ―マット試案を実際に活用してもらう。1か月の実施後、幼児・児童・生徒へのインタビュー実施と担当教師へのインタビューを実施し、改善点について検討する。現在のところ研究協力依頼校は秋田県立聴覚支援学校、富山聴覚支援学校、福島県立聾学校、京都府立聾学校、岡山県立岡山聾学校、鳥取県立鳥取聾学校、筑波大学心理・発達教育相談室の6校1機関程度を予定している。また、全国調査までの成果を国立特別支援教育総合研究所紀要に投稿を予定している。 そして、11月末までにフォ―マットを改良したものを作成する。改良したフォ―マットについて研究協力校や協力機関に実際に再度活用してもらう。1か月の実施後、幼児・児童・生徒へのインタビュー実施と担当教師へのインタビューを実施し、改善点について検討する。その後随時修正し、1月末までには各発達段階におけるフォ―マットを完成させる。 平成31年3月までに研究成果物である発達段階別作文のフォ―マットに関するリーフレットを作成し、全国の聾学校へ配布し普及を図る。リーフレットには日記・作文フォ―マットの見本も添える。 その後、本研究のまとめも行い、研究成果を国内の学会や国外の学会等で発表できる準備を行う。調査実施校には本研究実施・結果の扱いに関する同意書を提出していただく。
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