2017 Fiscal Year Annual Research Report
新規アルツハイマー病モデルマウスにおけるシナプス機能低下の分子メカニズム解析
Project/Area Number |
17H07418
|
Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
南 竜之介 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 創薬モデル動物開発室, 流動研究員 (90806895)
|
Project Period (FY) |
2017-08-25 – 2019-03-31
|
Keywords | アルツハイマー病 / シナプス機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究室では, 神経細胞と聴覚細胞の類似性に着目し, 内耳有毛細胞に AD の発症原因因子であるアミロイドβ(Aβ)を発現するTgマウス ( Tg[Math1E- Aβ42Arc] )を確立している. この新規 AD マウスモデルは生後4ヶ月で超高音刺激(32kHz)特異的な聴力低下を示す. 超高音刺激応答は加齢により減弱することから, 加齢が最大のリスクファクターである AD との相関が予想される. 本研究課題では, 新規 AD マウスモデルの創薬モデルとしての有用性を考える重要なステップとして, Aβ の発現による聴力低下の分子機構の解明を目指す. これまでに報告されている AD の発症メカニズムから類推すると, 新規 AD マウスモデルにおける Aβ 発現による聴力低下の要因として, 1)有毛細胞の変性, 2)シナプスの減少, 3)シナプス機能低下, という3つの可能性が予想される. そこで, まず, 有毛細胞変性の有無を検証するため, 蝸牛を単離して形態を観察した. さらに, 有毛細胞および聴神経細胞のシナプスマーカーで2重染色を行い, シナプス形成を観察した. その結果, 生後5ヶ月齢で超高音域を制御する有毛細胞の欠損およびシナプス形成能に顕著な異常は認められなかった. 一方で, シナプス形態に差が観察されることから, シナプス小胞リサイクリングをはじめとするシナプス機能の調節機構が発症に関与する可能性が示唆された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遺伝学的アプローチによる PI(4,5)P2代謝の重要性に関する解析を行うためのマウス B6;129-Synj1tm1Pdc/J (Synj1) は購入済みであったが, 半年ほど納期が遅れてしまったため解析スケジュールが遅れている. また, 前年度に行ったシナプス形態の観察に関しても実験系の再検討のため遅れている. 観察する蝸牛の領域やマーカーなどの解析基準を再検討し, 詳細な解析をすることで, 聴力低下の原因についてより明確な理解ができると判断したため, 現在新たな基準を確立し, 新規に抗体等を購入して解析を進めている.
|
Strategy for Future Research Activity |
PI(4,5)P2 の発現調節に重要 Synj1 との遺伝学的な相互作用を観察することにより, Aβによる聴覚低下の分子メカニズムを理解したい. 方法としては, [Math1E-Aβ42E22G] に Synj1 変異をヘテロで導入し, 生後4ヶ月で生じる聴力低下が抑制されるか否かを調べる. 具体的には聴性脳幹反応 (ABR) による聴力の測定を経時的に行う. 聴力が回復した場合に, 組織化学的にシナプス結合の変化を経時的解析する.
|