2017 Fiscal Year Annual Research Report
世代を越えてアブラムシの光周性を制御する季節タイマーの研究
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17J00016
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松田 直樹 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 昆虫 / 生理学 / 光周性 / 表現型多型 |
Outline of Annual Research Achievements |
季節タイマーがはたらいている個体と切れた後の個体との間で発現量が異なる遺伝子を探索するため、孵化から2世代目の個体と、実験室内で世代を繰り返した後の個体をそれぞれ長日および短日条件で飼育した。これらの虫が羽化した後、頭部からtotal RNAを抽出し、RNAシーケンスを行った。これによって1サンプルあたり50-100 bpからなる約40,000,000の配列を得た。 時計遺伝子のRNAiによって次世代の生殖型が変化することを確かめるため、まずは発育段階におけるどの時期に処理すれば次世代の生殖型が変化しうるのかを調べた。長日で育っている個体を4齢幼虫の時に短日へ移して子を産ませ、その子が2齢幼虫の時に再び長日へ戻せば多くの胎生メスが、戻さなければ多くの卵生メスが産みだされることがわかった。そこで、この2齢幼虫に時計遺伝子cycleの2本鎖RNAを注射したが、次世代の生殖型に明瞭な影響は見られなかった。また、3齢幼虫に時計遺伝子cycleおよびperiodの2本鎖RNAを注射して長日および短日で飼育したが、これらの遺伝子の発現量に明瞭な減少が見られなかった。現時点ではRNAiによる遺伝子発現の抑制はうまくいっていないと言える。 実験室内で世代を繰り返すことで季節タイマーが切れた後の個体を、春の様々な時期に京都の自然の日長と温度のもとに移して飼育した。これらの虫の多くは卵生メスやオスを産み、最も遅いものは5月にオスを産んだ。この結果から、季節タイマーがなければ春に不適な両性生殖型を産んでしまうので、季節タイマーがそれを防いでいるという仮説が支持された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に予定していた京都における自然条件飼育とRNAシーケンスを実行し、翌年度以降の札幌における自然条件飼育とシーケンスデータの解析につなげることができた。時計遺伝子のRNAiは難航しているが、代替策も含めて実験条件を検討する期間を長く設けているので、大きな遅れではない。
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Strategy for Future Research Activity |
札幌における自然条件飼育実験を行って、季節タイマーの生態的意義を実証する。RNAシーケンスによって得られたデータの解析を進めて、群間で発現量の異なる遺伝子を同定する。時計遺伝子のRNAiもしくは抗幼若ホルモン活性物質の投与などによって、光周性の経路において季節タイマーの作用する段階を特定する。
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