2018 Fiscal Year Annual Research Report
放射線治療における2次元熱蛍光線量計を用いた品質保証と人体模型線量計の開発
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17J00046
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
栁澤 伸 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 熱蛍光 / 放射線治療 / 品質保証 / 人体模型 / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は放射線治療における高空間分解能な人体内3次元線量分布の検証が必要とされている背景から、人体模型線量計の実現の期待ができる2次元熱蛍光線量計(TLD)システムの有用性の評価、人体模型線量計に用いる素子の選定及び人体組織等価性の評価を行う予定であった。2次元TLDシステムの有用性評価としては、前年度に引き続き、研究対象としているアルミナセラミックスから成る2次元TLDについて、医療用直線加速器におけるエネルギー依存性の調査を実施した。順天堂医院と横浜サイバーナイフセンターの2施設において、汎用放射線治療装置と定位放射線治療専用装置の2つにおいて、エネルギー、照射野、深さに対する吸収線量依存を実測により評価した。 また、人体模型線量計に関する研究については、実際に共同研究を締結している業者に委託し、素子の製作を進め、理論計算による人体組織等価性の評価を実施した。アルミナセラミックスの光子線治療における人体組織等価性を向上を図り、密度を制御したセラミックスの製作に取り組んでおり、前年度に密度を50%削減したセラミックスの製作に成功していたが、今年度は70%削減を目指したセラミックスの製作を委託した。しかしながら、現状の製作法では65%削減が限界であることが明らかとなった。理論計算においては、密度制御により人体組織等価としたアルミナセラミックスと人体組織において、ビーム軸に対して水平及び垂直方向の線量プロファイルの比較を行った。 全体を通じて、予定していた実測と理論解析、製作は完了したため、最終年度は論文としての研究成果の報告と、人体模型線量計のデモンストレーションを予定している。 研究成果の報告においては、英語論文の共著1報、国際会議での発表を2件、国際会議での受賞が1件であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体の研究状況としてはおおむね順調に進展しているが、アルミナセラミックスから成る2次元TLDのエネルギー依存性の評価において、理論計算による評価は、メーカーから提供されている線源データに限りがあり、統計誤差を十分に小さくできないことが明らかとなった。加速器自体をモデリングして一から計算する方法もあるが、こちらは膨大な時間がかかるため、現実的ではない。そのため、条件ごとのエネルギースペクトルを算出し、実測結果の裏付けとして用いることとした。 また、人体模型線量計の開発における、軟部組織等価アルミナセラミックスの製作は困難であり、ほかの種類の素子の利用が望ましい。受入研究者が軟部組織等価のTLDの開発を行っているが、素子の選定には時間がかかることが予想される。また、人体模型線量計のプロトタイプの製作を予定しているが、現状の最も軟部組織等価性の高い65%削減のアルミナセラミックスと骨等価の50%削減のアルミナセラミックスの2種の組み合わせを検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度の上半期は、平成30年度に実施した放射線治療における2次元熱蛍光線量計のエネルギー依存性についての論文投稿を予定している。それと並行して、人体模型線量計に関する密度制御アルミナセラミックスの熱蛍光特性の調査を実施し、9月に開催される国際会議での成果報告を予定している。また、プロトタイプの人体模型線量計の製作依頼を行う。 下半期は、人体模型線量計のプロトタイプを用いた照射実験を実施し、密度制御アルミナセラミックスに関する論文の投稿を行う。
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