2017 Fiscal Year Annual Research Report
触媒的不斉アリル化におけるπアリル供与性の逆転化:Ru/弱酸法の機構解明と応用
Project/Area Number |
17J00075
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鈴木 悠介 名古屋大学, 創薬科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | ルテニウム / 不斉アリル化反応 / 脱水型アリル化 / 遷移金属錯体触媒 / 機構解明 |
Outline of Annual Research Achievements |
塩基性条件下において機能する従来のTsuji-Trost(T-T)型反応において,アリルエステル等の高πアリル供与性化合物を合成するのは困難とされてきた.その達成には,アシルオキシ交換法やアリルハライドのようなより高いπアリル供与体を用いた特殊な条件が必要となる.この状況下において,塩基性条件から脱却してRu/H+触媒による「πアリル供与性の逆転」を実現した.本年度では,高性能発現機構と本法の合成的有用性を明確化すべく,Ru/H+触媒系における「反応機構解明」と「アリルエーテル基質への展開」に取り組んだ.前者においては,重水素標識化実験を実施し,本触媒系のマイナーエナンチオマーの起源を明らかとすることで,エナンチオ選択機構に関する重要な知見を得ることができた.加えて,示差走査熱量測定を行うことで,標準反応における活性化エネルギー,ならびに基質,触媒に関する反応次数を明らかとした.今後の機構解明研究における基盤を確立することができたと考えている.後者に関しては,アリルアルコールよりも化学安定性の高いアリルエーテル基質を用いたT-T型反応を確立した.この過程でアリル部置換基OR(R = H, CH3, Ph, Ac)の違いによる反応速度差を観測した結果,従来のT-T型アリル化反応の場合とは異なり,H>CH3>Ph>Acの順に反応速度が下がることを明らかとした.基質適応範囲の調査を行った結果,分子内に酸素,窒素,炭素求核部を有するいずれの基質に対しても目的のアリル化反応が進行することを確認している.従来のT-T型反応では達成困難とされてきた合成反応を実現できる可能性を示すことができたと考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,Ru/H+触媒の応用と機構解明研究を軸として設定した.今年度では,アリルメチルエーテル基質への展開や,示差走査熱量計を用いた機構解明を実施,前者の研究課題は論文として発表することができた.加えて後者の研究課題に関しても,本触媒系に関する重要な知見を得ることができている.そのため,当初の予定通りに進展しているものと判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,現在までの機構解明研究で得た知見を基盤として,本触媒系の全貌を明確化する.具体的な方針としては,速度式解析,反応中間体の単離・X線回折を実施することで,想定触媒サイクルを構築する.その後,理論計算を用いることでその妥当性を評価する計画である.また,アリルエーテル基質への展開で得られた知見をもとに,本触媒の特性を最大限に活用することで,天然物合成に向けた検討を行う方針である.
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