2017 Fiscal Year Annual Research Report
Lotka-Volterra型の2種走化性方程式系の数学解析
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17J00101
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
水上 雅昭 東京理科大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 非線形放物型方程式 / 走化性方程式 / Lotka-Volterra競合モデル / Navier-Stokes方程式 / 解の有界性 / 解の挙動 |
Outline of Annual Research Achievements |
走化性をもつ2種類の生物の運動を記述する数理モデルであるLotka-Volterra型の2種走化性方程式の特別な場合の解のふるまいについて研究を行い, 次のような成果を得た: 1. 熱半群の評価を適切に用いることで, 有界な時間大域的古典解が一意的に存在するための条件を導出した. この条件は現段階では最良の条件となっている. 2. 従来にないエネルギー関数を導入することにより, 両方の競合が弱いときと一方の競合が強いときに走化性の力が十分小さいという条件のもとで解の挙動を導出した. これらの成果は, 今後一般の場合を扱う際の足掛かりとなる結果である. また, 東京理科大学の来間俊介氏, 平田美沙季氏, 横田智巳教授との共同研究で流体とカップリングした方程式について扱い, 次の成果を得た: 1. 流体とカップリングした方程式の解がもつ性質を明らかにし, それを用いることで2次元の場合に時間大域的古典解の存在を示した. さらに解のふるまいの分類も行った. この結果は, 解の挙動が流体の影響をうけないということを示したという意味で価値のあるものであると考えている. 2. Lyapunov汎関数を駆使することで流体の方程式がもつ難点を乗り越え, 3次元の場合の弱解の存在を示すことができた. また, 流体がない場合の問題に対するエネルギー関数を参考に考案したエネルギー関数を用いることで, 得られた弱解がある時刻以降で古典解になり, さらに解がLotka-Volterra方程式の解と同様のふるまいをすることを証明した. さらに, 感応性関数をもつ場合の放物・放物型走化性方程式と放物・楕円型走化性方程式の関係を考察することで, 2つの方程式の関係を調べる際の指針となる新たな知見を得ることができた. 以上の得られた成果は国内外の研究集会等で発表し, 論文としてもまとめて専門誌に投稿した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究計画で目標としていた走化性が強い場合の問題は難問として知られており, 実際, 爆発をもたらす走化性項の処理の影響で解のふるまいの解析が非常に困難であった. そのため, まずは特別な場合である放物・放物・楕円型の問題を扱い, 一般の場合における問題を解決するための土台を築くことを目標とした. 平成29年度は, 走化性の力が十分小さいという条件のもとで時間大域的古典解の存在と解の挙動についての成果を得ることができた. 特に, 両方の競合が弱いときと一方の競合が強いときに解の挙動を導出する新しいエネルギー関数を導入した. さらに, 特別な場合のエネルギー関数をもとに考案したエネルギー関数により, 流体とカップリングした方程式の解が満たす重要な性質を明らかにすることができた. その結果, 平成31年度の計画を前倒しして行い, 2次元および3次元の場合の解のふるまいを導出することができた. また, 放物・放物型走化性方程式と放物・楕円型走化性方程式の関係を考察することにより, 2つの方程式の関係を調べる際に有効な新たなアプローチを見出すことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
以下の研究を行う: 1. 特別な場合において, 両方の競合が強い場合及び走化性の影響が強い場合について検討する. 平成29年度に開発したエネルギー関数をもとに, まず特別な場合について検討し, 一般の場合の解決に向けた糸口となる方法を模索する. 2. 走化性方程式とLotka-Volterra方程式の関係について検討する. 既に2つの方程式の関係を導出する方法をいくつか確立しているため, それらとLotka-Volterra型の2種走化性方程式の研究で得られた評価を組み合わせることでそれぞれの方程式の解の関係を明確にすることを目指す. また, 得られた結果は国際会議「The 12th AIMS Conference on Dynamical Systems, Differential Equations and Applications」などで報告し, 専門家の意見を伺うことで研究の推進を図る.
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