2018 Fiscal Year Annual Research Report
応力による単分子接合物性の能動的制御および新規機能探索
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17J00102
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
岩根 まどか 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 単分子接合 / 応力 / 電気伝導度 / 応答性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、実験的に単分子接合に対して面直(Z)方向だけでなく面内(X)方向にも応力を加えながら単分子接合の構造を変調することで、単分子接合の電気伝導度を制御することを目的とした。単分子接合は走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いて作製した。昨年度にSTM 探針をX方向にも移動できるようにすることで単分子接合に多方向から応力を与えるシステムを構築した。今年度は、構築したシステムを用いて応力印加による単分子接合の電気伝導度の応答性を調べる研究を行った。実験では、金属との結合様式等が異なる分子を用いて、Z及びX方向にSTM探針を動かしながら電気伝導度を測定した。STM探針を500Hzの速度で周期的に振動させると、単分子接合の電気伝導度が変化した。電気伝導度の時間依存性について高速フーリエ変換(FFT)を行い、周波数との関係をヒストグラムとして表現した。ヒストグラムで現れている500Hzでのピークの高さは、応力印加時での伝導度の最大値と最小値の差に比例している。Z, X方向それぞれについて500Hzでのピークの高さと探針の振幅の関係から、伝導度の探針振動に対する応答性を求めた。分子の種類に関係なく、X方向よりZ方向に振動させた方が大きいことが分かった。続いて、探針の移動方向に対する、伝導度応答性の相対比を求めた。実際に、ビピリジン、ベンゼンジアミン単分子接合について伝導度応答性の相対比に有意な差が現れた。その結果は、金属との結合様式に応じて金属と分子間の界面構造変化の仕方が異なることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に構築したシステムを用いて、金属との結合様式が異なる分子の電気伝導度の応答性を評価することを達成した。具体的には、金属と結合する部位の形状が違うビピリジンとベンゼンジアミンを用いると、電気伝導度の応答性に有意な差が現れている。 学会発表については、国内会議2回、国際会議1回出席した。論文投稿についても、2件出版された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、昨年度に構築したシステムの評価を進めるため、架橋させる分子の結合基の種類や分子骨格の形状を変えながら電気伝導度の応答性を比較する予定である。 伝導度応答性が分子種によって差が現れるメカニズムを明らかにするため、単分子接合の電子状態を解析する方法を確立する予定である。具体的には、熱起電力測定システムを構築することを検討している。安定した分子接合を形成した状態で微小な電位差を観測するために外部ノイズを最小限に抑えるためにファラデーケージを導入する。また、電極間に温度差を与えるためにペルチェ素子を STM 装置に導入する。構築したシステムを用いて、単分子接合の熱起電力を測定し、同時に計測する電気伝導度・I-V特性と組み合わせることで単分子接合の電子構造解析法を開発する。
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