2018 Fiscal Year Annual Research Report
Reconstruction of the History of Philosophy on the Principle of Individuation: from Thomas to Suárez
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17J00136
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
石田 隆太 慶應義塾大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 個体性 / 抽象化 / 数量化 / 種(species) / 天使論 |
Outline of Annual Research Achievements |
1、個体化論の分析としては、(1)トマス・アクィナスとボナヴェントゥラを対象として、両者において個体化が何を意味しているのかを比較した。ボナヴェントゥラは「個体化」をより正確には「個体性」の意味合いで考えているのに対して、トマスは個体化をあくまで何かの「個体化」として考えているという解釈を様々なテクストを用いて支持した。(2)14世紀のトマス主義者であるリューベックのヘンリクスというスコラ学者の個体化論を対象として、トマスの個体化論がヘンリクスにおいてどのように受容および変容しているのかを分析した。トマスは個体を「抽象化」しているのに対して、ヘンリクスは個体を「数量化」しているという整理によって両者の個体化論の違いを明らかにすることを試みた。 2、天使論の分析としては、(1)ボナヴェントゥラ、トマス・アクィナス、ドゥンス・スコトゥスという三人のスコラ学者を対象として、天使の種が一つか複数かという議論を哲学史的な観点から分析した。この分析からは、哲学的な知と天使論という神学的な知の間に或る種の連続性を認めるか認めないかという点を再考する機会が与えられた。より個別的には、(2)トマス・アクィナスの天使論に焦点を当てて、種が個であるという種の個体説を以上の(1)から得た知見の下に再検討した。(3)西洋近世のスコラ学者フランシスコ・スアレスの天使論に焦点を当てて、天使の種に関する彼の思想的立場を分析するとともに、以上の(1)から得た知見と突き合せる作業を行った。 3、翻訳研究として、(1)トマス著『「魂について」註解』、(2)ドゥンス・スコトゥス著『「命題集」註解(オルディナティオ)』、(3)ペトルス・ヨハニス・オリヴィ著『第三任意討論集』の翻訳研究を進め、大学紀要にその成果を発表した。すべて本邦初訳である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究実施計画においては、1、ドゥンス・スコトゥスの翻訳研究を進めること(上記「研究実績の概要」の3の(2)に対応)、2、トマスの個体化論が14世紀のトマス主義者であるリューベックのヘンリクスにおいてどのように受容されているかを分析すること(上記「研究実績の概要」の1の(2)に対応)、3、西洋中世哲学における天使論そのものの分析(上記「研究実績の概要」の2の(1)(2)(3)に対応)を予定していた。1に関しては『オルディナティオ』以外の翻訳研究には進展がなかったことが問題点として残るが、2、3に関しては当初の研究実施計画の実現を達成することができた。加えて、上記の「研究実績の概要」における1の(1)、3の(1)(3)の研究を行うことができた。よって、全体としては研究の進捗状況がおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
スコトゥス著『オックスフォード講義録』、スアレス著『形而上学討論集』の翻訳研究を、次年度以降の研究に支障がない範囲で可能な限り進めていく。
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Research Products
(10 results)