2017 Fiscal Year Annual Research Report
An approach to the Kazhdan-Lusztig polynomials via the representation theory of quantum symmetric pairs
Project/Area Number |
17J00172
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
渡邉 英也 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 量子対称対 / カジュダン・ルスティック多項式 / 標準基底 / 結晶基底 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はカジュダン・ルスティック多項式を量子対称対の表現論という新しい視点から解析することである。カジュダン・ルスティック多項式はヘッケ代数及びその表現に現れる標準的な基底(カジュダン・ルスティック基底)とある別の基底の間の変換表列の成分に現れる多項式のことで、半単純リー代数・ヘッケ代数・量子群の表現論において重要な役割を果たすことが知られている。 一方、量子対称対とは量子群のある余イデアル部分代数のことで、AIII型と呼ばれる特別な場合には、B・C・D型のヘッケ代数とシューア双対性を満たすことが知られている。従って、量子対称対の表現論はヘッケ代数のそれと密に結びついていると言える。 本年度はまず量子対称対の表現論において最高ウェイト理論を確立した。これにより、ある適切な表現圏における既約表現を全て分類することに成功した。次に、結晶基底の理論を導入し、その性質を調べた。その結果、量子対称対の結晶基底は通常の結晶基底と同様に、表現の組合せ論的な性質を抽出していることがわかった。 また、Wang らとの共同研究において、アフィン量子対称対とアフィン・ヘッケ代数の間にシューア双対性が成り立つことを証明した。これにより、周期的カジュダン・ルスティック多項式がアフィン量子対称対の表現論で捉えられるという更なる確証が得られた。 年度末にはヴァージニア大学のWang氏を訪ね、量子対称対の表現論とその標準基底について議論を重ねた。特に、スーパー・リー代数のBGG圏の研究への応用が期待される考察を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画に従って量子対称対の表現論において最高ウェイト理論を確立し、結晶基底の理論を導入することで適切な表現圏における既約表現を分類し、各既約表現の構造を組合せ論的に記述することに成功した。この結果はアフィン量子対称対の表現論やヘッケ代数の表現論などにおいて様々な応用が期待できる。 また、Wang らとの共同研究において、アフィン量子対称対とアフィン・ヘッケ代数との間にシューア双対性が成り立つことを証明した。この結果は、今後の周期的カジュダン・ルスティック多項式の研究への応用が大いに見込まれるものである。 以上の理由から、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、量子対称対の表現論において大域的結晶基底の理論を導入し、その性質を調べる。大域的結晶基底の理論が確立すれば、結晶基底の組合せ論的な性質と合わせて、各表現の構造をより詳細に調べられるようになる。 次に、アフィン量子対称対のある表現に、アフィン量子対称対の作用と両立するような対合を構成する。この対合は、構成のしかたから、三角性や整性といった重要な性質を持つことが期待され、したがって大域的結晶基底を持つことが証明できる。 さらに、この表現がアフィン・ヘッケ代数の周期的加群と同型であることを示し、両者の標準的な基底を同定することで、周期的カジュダン・ルスティック多項式をアフィン量子対称対の表現論の枠組みで捉える。
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