2018 Fiscal Year Annual Research Report
測地データを用いた東北日本の歪パラドクス問題とダイナミクスの解明
Project/Area Number |
17J00173
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊東 優治 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
|
Keywords | 地殻変動 / 余効変動 / 地震サイクル / プレート間固着 / GNSS / 前弧スリバー / 地殻不均質 / 粘弾性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は①昨年度の成果である2003年十勝沖地震の余効変動のモデリングの雑誌論文を投稿し受理に漕ぎ着け、カナダ地質調査所のKelin Wang博士のグループに約9ヶ月滞在して②2003年十勝沖地震前約5年半の地殻変動メカニズムをモデル化した。本項では②について記載する。 最初にGNSSデータに含まれる永久変形のメカニズムを検討した。千島海溝での太平洋プレートの斜め沈み込みに伴う前弧側の南西進(前弧スリバー運動)がこれまで広く知られた北海道の永久変形のメカニズムであったが、GNSSデータだけでなく地震学的観測や地質学的観測を比較することで、過去のスリバー運動は間違いないとみられるが現在の永久変形の様式が異なる可能性を導いた。次に同じGNSSデータを用いてM8-9級の地震間のプレート間固着のモデル化を行った。近年では固着に伴う弾性変形と粘弾性変形の両方を考慮することの重要性が指摘されているため、有限要素法(FEM)を用いて3次元地下構造の影響を考慮したモデルを構築し単純な固着分布を仮定して地震間の固着に伴う弾性・粘弾性変形を計算し、観測データとの比較を行った。その結果、千島海溝沿いの固着のモデル化の研究で多くの場合無視されてきた粘弾性変形の重要性が示された。また北海道東部においては実際に火山フロントと背弧が前弧と比べて変形しやすいとみられることを示した。その上で、先述のシミュレーションを基に決定した地殻の不均質構造と永久変形の影響を考慮してプレート間の固着の詳細な分布をインバージョン解析によって推定した。その結果、海溝から深さ20-40km程度の深さまでプレート境界が完全に固着していることが推定された。これらの研究結果をカナダ滞在中に米国で開催された国際学会で発表し、学術論文化に向けた準備に着手した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は2003年十勝沖地震前約5年半の地殻変動メカニズムの理解に注力したため、本研究計画の最終目標である約120年の地殻変動のメカニズム解明とプレート間固着・すべりのモデル化に着手することができなかった。しかしながら、本年度に得られた研究結果は本研究計画の大目標の達成に向けた多くの知見を提供するものである。また本年度は有限要素法の習得にも注力した。有限要素法は本研究計画の達成に必要不可欠であると考えられるため、その習得は本年度の重要な進捗であったと言える。これらの状況を勘案して、現在までの進捗状況をやや遅れていると評価する。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度に実施した2003年十勝沖地震前約5年半の地殻変動モデルや本年度に雑誌論文として受理された2003年十勝沖地震時・地震後の地殻変動モデルを基に、GNSSデータやそれ以前の験潮・水準測量・三辺/三角測量データを用いて約120年間の地震サイクルや地殻変動メカニズムのモデル化に取り組む。また、本年度に実施した2003年十勝沖地震前約5年半の地殻変動モデルに関する学術論文の投稿と掲載を目指す。さらに、本研究計画で得られた結果を博士論文にまとめる。
|
Research Products
(5 results)