2017 Fiscal Year Annual Research Report
氷表面における炭素,窒素,酸素原子の吸着・拡散活性化エネルギーの第一原理計算
Project/Area Number |
17J00199
|
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
桑畑 和明 横浜国立大学, 工学府, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
|
Keywords | 星間分子雲 / 星間化学 / 表面化学反応 / アモルファス氷 / 量子化学 / 化学反応 / 計算化学 / ONIOM法 |
Outline of Annual Research Achievements |
氷表面における原子(炭素、窒素、酸素)の吸着、拡散は星間分子雲における分子生成に重要な過程であり、分子動力学計算等のモデル計算で積極的に調べられてきたが、そもそもモデル計算に必要なパラメーターである吸着エネルギー、および拡散活性化エネルギーの信頼できる値は存在しなかった。そこで、本研究ではこの2つのパラメーターを高精度の第一原理計算で導出することを目的としている。 研究の準備として強誘電体ice XIと反強誘電体ice XIの2種類の結晶氷、およびアモルファス氷のモデリングをおこなった。結晶氷は単位格子に水分子を配置したのちに密度汎関数法による構造最適化を実行し作成した。アモルファス氷は分子動力学法により短距離秩序構造を保った状態で水分子を配置したのちに、構造最適化をおこない作成した。また、氷表面との比較のために数個の水分子(1~10個)から成るクラスターを作成した。各クラスターは最も安定な構造を取るように最適させた。 氷表面における原子の吸着を研究する前に計算がより容易である分子(H2、CO、HF)の水クラスターにおける吸着エネルギーのクラスターサイズ依存性を調べた。その結果、大まかには水分子の個数とともに吸着エネルギーが増加したが、水分子が4個や8個などの対称性が良いクラスター表面においては吸着エネルギーが小さくなった。この原因を調べるために、エネルギー分割法により相互作用の成分を調べた。その結果、水分子が4個や8個のクラスターにおいてファンデルワールス力の静電場-静電場相互作用が他のクラスターと比べて小さくなっていることがわかった。これは対称性が高いクラスターは水分子の双極子をクラスター内で打ち消しあうことで、クラスター全体の双極子が小さくなっているためと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は氷のモデリングを実行し、3種類の構造の異なる氷を作成した。また、数個の水分子(1~10個)から成るクラスターを作成し、氷表面における計算、および水クラスターのサイズ依存性を調べる準備が完了した。 原子の吸着エネルギーを計算するための予備研究として、計算がより簡単である分子の水クラスターに対する吸着エネルギー依存性を調べた。その結果、対称性の良い水クラスターにおいて吸着エネルギーが低くなることがわかった。その原因として、対称性の良いクラスターは双極子モーメントが小さくなっているためであることを明らかにした。以上の成果より、おおむね順調に進展していると、自己評価をした。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は作成した氷、およびクラスター表面における原子の吸着エネルギー、拡散活性化エネルギーを導出する。また、最終年度となるため、研究総括もおこなう。
|