2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J00211
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
重富 健太 九州大学, システム生命科学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | タイトジャンクション / アドへレンスジャンクション / 脂質 / コレステロール / スフィンゴミエリン |
Outline of Annual Research Achievements |
上皮細胞は、複数の細胞間接着を担う細胞膜構造を有しており、タイトジャンクション(TJ)とアドへレンスジャンクション(AJ)は細胞接着の形成において重要な膜構造である。先行研究よりTJとAJを構成する分子の同定は進んだが、細胞接着構造の形成制御機構は殆ど明らかになっていない。本研究では、TJ形成過程に着目し、脂質、裏打ちタンパク質等から複合的にTJ形成を理解することを目的とした。 本年度は、脂質に着目した解析を行った。細胞接着の形成過程では、TJはAJが形成された後に形成されるが、AJがTJ形成にどの様に関与しているかは、未解明である。AJのTJ形成への関与を調べるために培養上皮細胞株において、AJ形成の必須裏打ちタンパク質αカテニンの発現を消失させた細胞株(α-カテニンKO細胞)を樹立した。この細胞では、AJ及びTJのいずれの構造も消失していた。野生型細胞とα-カテニンKO細胞の脂質組成を比較した際に、α-カテニンKO細胞では、極長鎖脂肪酸鎖スフィンゴミエリン(SM)が減少していた。SMと相互作用するコレステロールに関しても、野生型と比較してα-カテニンKO細胞では減少していた。また、α-カテニン KO以外の方法でAJの形成を阻害した場合にも同様に、コレステロールは減少した。以上より、AJ形成は、形質膜のコレステロールの量を増加させることがわかった。次に、AJ形成に伴うコレステロールの増加がTJ形成に必要か否かを検討した。α-カテニンKO細胞に対して、強制的に形質膜のコレステロール量を増加させると、クローディンが細胞接着領域に集積し、TJが形成された。AJが形成されない状態においても、形質膜のコレステロールを増加させると、α-カテニンKO細胞においてもTJが形成された。このことから、AJの形成は形質膜の脂質組成を変化させることによって、TJの形成を促進することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在まで、タイトジャンクション形成過程に着目し、脂質、裏打ちタンパク質等から複合的にタイトジャンクション形成を理解することを目的とし、研究を行ってきた。本年度は、主に脂質に着目したタイトジャンクション形成機構の解明を行ってきた。細胞接着の形成過程において、タイトジャンクションはアドへレンスジャンクションが形成された後に形成される。これまでは、アドへレンスジャンクションが形成されることによって、細胞膜同士を近接させ、タイトジャンクション形成を促進すると考えられてきたが、具体的な証明はなされて来なかった。アドへレンスジャンクションがどの様にタイトジャンクション形成に関与するかを調べために、培養上皮細胞のEpH4細胞において、アドへレンスジャンクション形成に必須である裏打ちタンパク質αカテニンの発現を消失させた細胞株(α-カテニンKO EpH4細胞)を樹立した。この細胞を用いた様々な解析によって、アドへレンスジャンクションの形成は形質膜の脂質組成を変化させることによって、タイトジャンクションの形成を促進することを明らかにし、これまでの結果をJouranl of Cell Biology誌に投稿し、受理された。以上より、当該研究は当初の計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果によって、アドへレンスジャンクションの形成が形質膜上の脂質組成を変化させ、タイトジャンクションの形成を促進していることが示唆された。しかしながら、アドへレンスジャンクションの形成がどのようにして形質膜上の脂質組成を変化させるのか、そのメカニズムは未解明のままである。今後は、この点を明らかにするために、脂質輸送タンパク質、また脂質の代謝制御に着目して研究を進めたい。コレステロールはERで合成され、ゴルジ体を経て形質膜へ輸送される。アドへレンスジャンクションの形成を阻害した細胞では、コレステロールが減少するが、この細胞においては、脂質の輸送過程に異常が生じている可能性がある。そこで、野生型の細胞とアドへレンスジャンクションの形成を阻害した細胞で、発現量、局在の異なる脂質輸送タンパク質を探索したい。また、コレステロールの恒常性の維持には、SREBPとよばれる転写促進因子が重要な役割を果たしている。この分子は通常状態ではERに局在するが、コレステロールが減少するとゴルジ体へ輸送され、その後、核へ移行することが知られている。アドへレンスジャンクションの形成を阻害した細胞では、SREBPの核への移行過程またはその発現量が減少している可能性がある。今後はこの点に関しても検証を進めたい。 また、タイトジャンクションの裏打ちタンパク質であるZOタンパク質に着目した研究に関しても、現在ZOタンパク質欠損上皮細胞にリン酸化変異体ZOタンパク質を発現させた細胞株を樹立し、解析を進めている。これに関しても、この細胞株を用いてタイトジャンクションの機能、構造に関して研究を進めていきたい。
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Research Products
(3 results)