2018 Fiscal Year Annual Research Report
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17J00227
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
菊田 康平 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 導来圏 / 圏論的エントロピー / 距離空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)圏論的エントロピーとは圏論的力学系の不変量であり,自己同値群上の共役不変な実数値関数を与える.前年度まで報告者は,代数多様体の導来圏の自己同値函手の圏論的エントロピーの評価を考察した.ここで三角圏に対して定義される安定性条件という概念を考える.安定性条件の空間は自然な距離構造を持ち,自己同値群はこの空間に自然に等長作用する.距離空間への等長作用から定まるtranslation lengthと圏論的エントロピー比較を動機として,安定性条件の空間上の距離構造を調べた. (2)Dimitrov-Haiden-Katzarkov-Kontsevichにより擬アノソフ函手という概念が定義された.実曲面論における擬アノソフ写像の類似であり,安定性条件の言葉を用いて定義される.楕円曲線の導来圏には,SL(2,Z)の双曲元に対応する自己同値函手があり,報告者はこれが擬アノソフ函手であることを示した.これで最も基本的な例の存在が確かめられた. (3)Serre函手の圏論的エントロピーの漸近挙動を用いてSerre次元という三角圏の不変量が定義される.代数多様体の導来圏の場合は、その代数多様体の次元と一致するなど非常に自然な概念であることが分かっている.最近Elagin-Luntsにより,これまで知られている種々の次元との比較がなされるなど,その重要性が広く認識されつつある.報告者は共同研究者らとともに,安定性条件の空間上の大域次元関数とSerre次元の関係を考察した.さらにその延長として,現在はSerre次元(と安定性条件)の情報からあるクラスの三角圏を復元するという主張を考察している. 以上は次年度に論文にまとめる予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
圏論的エントロピーのGromov-Yomdin型等式をより深く理解するため,距離空間を用いた研究に取り組み,部分的結果とともに次年度以降の方針が定まった.また「研究実績の概要」にあるように,Serre次元の研究も進展した.以上より申請書に記載された研究計画にある課題の解決に向けて,着実に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた結果をより発展させる.具体的にはより高次元の代数多様体に対して,圏論的エントロピーの評価や安定性条件の空間の距離空間的性質を調べる.
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