2017 Fiscal Year Annual Research Report
Rhodium-Catalyzed Cross-coupling Reaction between Phenol Derivatives and Benzene
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17J00230
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
安井 孝介 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 炭素-酸素結合切断 / ロジウム触媒 / クロスカップリング / 還元的切断 / アルキニル化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
ハロゲン化物と有機金属試薬とのクロスカップリングは現代社会に不可欠な物質の生産に多用される触媒反応である。さらなるクロスカップリングの高度化を目指し、我々は環境負荷の大きなハロゲン化物ではなく、安全・安価で天然に豊富に存在するフェノール誘導体を用いる反応開発を展開してきた。この反応開発では通常は切断困難な炭素-酸素結合を如何に切断するかが鍵となる。これまでニッケル触媒が最も有効な触媒であることがわかっている。(例えば、Acc. Chem. Res. 2015, 48, 1717.) これまで私は不活性な炭素-酸素結合とベンゼンの炭素-水素結合との反応を報告している。(ACIE 2017, 56, 1877.)この反応では、ニッケル触媒ではなくロジウム触媒を用いることが重要であった。これは、不活性な炭素-酸素結合の変換に固執することなく、ベンゼンの炭素-水素結合の切断に有効なロジウム触媒に炭素-酸素結合活性化能を付与できたことが鍵である。このような背景のもと、私はロジウム触媒ならではの炭素-酸素結合変換反応をさらに探索することとした。その結果、下記の反応が進行することを明らかにした。 従来のクロスカップリング反応では有機金属試薬を用いられてきたが、有機金属試薬由来の金属廃棄物を化学量論量生じることが課題だった。今回私は、不活性な炭素-酸素結合の変換をアルコールを反応剤として用いて還元的切断、ならびにアルキニル化が進行することを明らかにした。(Synlett 2017, 28, 2569.; OL 2018, 20, 2108.)これらの反応は化学量論量の金属廃棄物を生じず、有機化合物であるケトンのみを放出する環境調和的な反応である。また、これら2つの反応はニッケル触媒を用いるとアルコールを反応剤とすることができないことから、ロジウム触媒に特徴的な反応であることも明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書を提出した当初、私は既に進行するとわかっていた別の反応の調査に着手すると述べていた。しかしながら、研究を進める中でこれまで不活性な炭素-酸素結合の変換に用いられてこなかったアルコールが反応剤として利用できることを明らかにした。アルコールは有機化合物中に普遍的に存在する官能基の一つであり、有機金属試薬の代わりに用いることができれば、より環境調和性の高い反応となる。したがって、このアルコールを反応剤とする反応をさらに研究することとした。 一つ目の反応はイソプロパノールを不活性な炭素-酸素結合の還元剤する反応である。イソプロパノールは大変安価に入手可能なアルコールである。さらに、これまでに報告されている不活性な炭素-酸素結合の還元反応では反応性の高いヒドロシランやGrignard試薬を用いてきたため、官能基許容性が低いという課題があった。今回私が見出したイソプロパノールを還元剤とする反応では、前述の還元剤では適用できないケトンや不飽和結合をも適用できるという利点がある。したがって、イソプロパノールを用いることで、その入手容易性の上に、合成化学上の利点があることを明らかにした。(Synlett 2017, 28, 2569.) 二つ目の反応はプロパルギルアルコールをアルキニル化剤とするアルキニル化反応である。この型式の反応においても、従来法では適用できないカルボニル基を有する化合物群の炭素-酸素結合を選択的にアルキンに変換できる触媒を開発した。また、このアルキニル化反応を用いることで、種々の複素環の前駆体となるアルキニルケトンを対応するフェノールから短工程で入手できるようになった。(OL 2018, 20, 2108.)
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Strategy for Future Research Activity |
これまで不活性フェノール誘導体の炭素-酸素結合の変換反応をロジウム触媒を用いて行ってきた。しかしながら、不活性フェノール誘導体の炭素-酸素結合の変換反応は広く研究されていることもあり、異なる化学分野を開拓する必要性がある。そこで、申請書にも示したようにカルボン酸の直截的な変換反応の開発に着手する。 カルボン酸はフェノールと同様、安価で入手容易な化合物群であり、直截的に変換する手法が開発できれば、合成化学的に有用性の高い化学反応となること間違いない。最近になって、カルボン酸をその誘導体あるアミドやエステルに変換したのちに反応剤とする反応がいくつか開発されているものの、カルボン酸そのものを用いた例はほとんどない。したがって、今後2年間はカルボン酸を直截的に変換する手法の確立を主たる研究目的として、研究活動を行う。
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