2017 Fiscal Year Annual Research Report
細胞膜Blebにおけるアクチン細胞骨格の再集積過程の解析
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17J00242
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
青木 佳南 九州大学, システム生命科学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | Bleb / アクチン細胞骨格 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、「細胞膜Bleb の形成・退縮を規定する分子の制御メカニズムの解明(研究①)」と、「Bleb 形成・退縮に関わる新規分子の機能解析(研究②)」を中心に研究を行った。 研究①について、本年度は、Rnd3とRhoAの相互拮抗作用がBlebの形成・退縮制御において中心的に機能していることを示すため、数理モデルを構築し、Bleb形質膜上における各分子の挙動のシミュレーションによる検討を行った。各Bleb制御分子の変異体を用いた実験とシミュレーションの結果から、これまでに分かっていた退縮過程におけるRhoA-ROCK経路による急速なアクチン再集積に加え、Cdc42経路による恒常的なアクチンの再集積も必要であることが明らかになった。ライブイメージング観察でも、Bleb拡大期においても緩やかなアクチンの回復が起こっていること、Cdc42経路の阻害によりこのようなアクチンの恒常的な回復が抑制されることを確認した。また、Cdc42経路による恒常的なアクチンの再集積のパラメータを加えた数理モデルにより、シミュレーション上でもライブイメージング観察結果と同様の分子の挙動やBlebの形態変化が示されることを確認した。 研究②については、これまでの研究で見出された、Bleb拡大期にのみBleb細胞質内へ選択的に濃縮するシグナル伝達分子の機能解析を行った。その結果、これら分子の細胞質内濃縮が、Bleb内外における細胞質の不均一性に由来するものである可能性を見出した。また、あるシグナル伝達に関与する分子が拡大期のBleb細胞質に特異的に集積することを新たに見出し、そのシグナル伝達経路を阻害剤やドミナントネガティブ体の発現により抑制することで、Blebの退縮が異常になることを確認した。以上の結果は、Bleb拡大期のタイミングを制御する新規のシグナル伝達経路の存在を示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「Bleb の形成・退縮を規定する分子の制御メカニズムの解明」について、本年度はRnd3とRhoAの切り替えを制御する分子機構の解明を目的とし、数理モデルの構築を中心とした解析を行った。その結果、Rnd3とRhoAによる急速なアクチン再集積経路に加え、Cdc42経路による恒常的なアクチン再集積経路の存在を新たに見出すことができた。 「Bleb 形成・退縮に関わる新規分子の機能解析」については、以前までの研究で見出されたBleb内細胞質へ濃縮する分子の解析に加え、同様にBleb内へ濃縮する新たなシグナル伝達分子を見出し、その機能解析とシグナル伝達経路の同定を行った。これにより、Blebの拡大期を制御する新規シグナル伝達経路を新たに同定することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、「Bleb の形成・退縮を規定する分子の制御メカニズムの解明」について、今年度に引き続き、数理モデルとライブイメージング観察を組み合わせた解析を継続して行う。また、Bleb の拡張期を規定するRnd3 の形質膜への局在制御メカニズムの解明を目指し、Rnd3の挙動に注目した分子動態の解析を行う予定である。 また「Bleb 形成・退縮に関わる新規分子の機能解析」については、Bleb内外の細胞質の質的な差異と、新規シグナル伝達分子の流動性の差異について、定量的な解析を行う予定である。また、本研究で見出した新規シグナル伝達分子について、、CRISPR/Cas9システムによりこれらの遺伝子の発現を消失させた細胞株を作出し、Blebの形成・退縮に対する影響をライブイメージングや蛍光抗体染色により解析する。
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Research Products
(2 results)