2019 Fiscal Year Annual Research Report
不等長2本鞭毛の運動性分化を統御する新規因子の解明
Project/Area Number |
17J00324
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
寺内 菜々 筑波大学, 生命環境系, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2022-03-31
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Keywords | 褐藻 / 配偶子 / 走化性 / 性フェロモン / 鞭毛 |
Outline of Annual Research Achievements |
褐藻の同形・異形配偶の場合、雌性配偶子は着底すると性フェロモンを放出し雄性配偶子を誘引する。雄性配偶子は性フェロモンを感知すると運動性を変化させ雌性配偶子に接近する。本研究に用いている異形配偶を行う褐藻ムチモは、雄性配偶子は性フェロモン非存在下において3次元的な遊泳軌跡が主となり螺旋状の遊泳軌跡を示すが、性フェロモン存在下においては、2次元的な運動を示し、小さな円を描く軌跡へと変化する。これらの遊泳パターンの変化は、雄性配偶子が有する前・後鞭毛の波形変化によって制御されている。しかし、どのようなシグナリングメカニズムによってこれらが制御されているのかは明らかになっていない。本研究では、まず、褐藻配偶子の鞭毛運動制御への関与が示唆されているカルシウムイオンに着目した。その結果、細胞内外のカルシウムイオン濃度を変化させるだけで、性フェロモン存在下で生じる鞭毛波形と類似した波形を生じさせることができることがわかった。さらに、この時の前後鞭毛の波形変化で要求されるカルシウムイオン濃度は異なることも明らかになった。今後の計画としては、カルシウムインジケーターを用いての鞭毛内カルシウムイオンの濃度変化について、詳しく観察していく予定である。 雄性配偶子が特異的に持つと考えられる、走化性に関わるタンパク質を検出するために、雌雄配偶子間での鞭毛タンパク質の比較解析を行う予定であったが、本実験については出産・育児により中断した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は実験材料である褐藻ムチモのフィールドサンプルの採集量が非常に少なく、配偶子が必要量回収できなかったため、タンパク質解析に遅れが生じたが、ムチモ培養株を用いた生理学実験については予定通り進行した。
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Strategy for Future Research Activity |
出産・育児による採用中断後、褐藻雄性配偶子の鞭毛運動とカルシウムイオンの関係については、新たな解析を加えて論文投稿を目指す。雌雄配偶子間での鞭毛タンパク質の比較解析については、配偶子の回収量を上げ、当初の計画通り実験を遂行する。
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