2017 Fiscal Year Annual Research Report
Independent control of electron and phonon by zero or one dimensional nanostructures for high-performance transparent thermoelectric materials
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17J00328
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石部 貴史 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 熱電変換 / ナノワイヤ / 酸化物 / 透明導電膜 / ナノドット / ゼーベック係数 / パルスレーザー堆積法 / 酸化亜鉛 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ZnOナノワイヤをZnO膜中に導入した“ZnOナノワイヤ埋め込み構造”を形成することで、ナノワイヤ界面でのフォノン散乱増大による熱伝導率の低減、及び低次元構造による出力因子の増大を同時実現することにある。 H29年度の目標は、ナノドットによるナノワイヤの高面密度成長であり、予定通り、高面密度化を実現した。さらに、“ZnOナノワイヤ埋め込み構造”は、ZnO膜と比較して、出力因子を2倍以上増大することに成功した。以下、具体的内容を述べる。 1 ナノワイヤ面密度制御方法の確立。ナノワイヤの成長核として、面密度制御性の高い高面密度ナノドットを用いて、新たなナノワイヤ面密度制御方法を確立した。ナノドットを用いることで、ナノドットがない場合と比較して、ナノワイヤ面密度を5倍以上増大することに成功した。この時、ナノドットが作る数nmの表面ラフネスがナノワイヤ面密度に影響することを見出した。 2 ナノワイヤ面密度と出力因子増大倍率の関係の調査、及び出力因子増大メカニズムの解明。ナノワイヤの面密度が4×10^9 cm^-2以上の“ZnOナノワイヤ埋め込み構造”において、電気伝導率を維持したまま、ゼーベック係数を増大し、出力因子の増大に成功した。高品質なナノワイヤ界面に形成されるエネルギー障壁により、高エネルギー電子の弾道的な伝導が生じ、出力因子が増大することを理論的に示した。 3 信頼性のあるゼーベック係数測定方法の確立。ゼーベック係数の増大を定量的に議論するため、信頼性の高いゼーベック係数測定方法を確立した。この際、学術振興会の研究奨励費でPCを購入し、有限要素法により試料内の二次元熱分布を検討した結果、熱電対の接触具合により数%の誤差が生じることが分かった。この知見をもとに、毎回、熱電対の接触誤差が少なくなるように、測定装置を改良し、ゼーベック係数の測定精度を向上した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
H29年度の目標は、ナノドットによるナノワイヤの高面密度成長であった。計画通り、ナノドットを用いてナノワイヤの高面密度化に成功し、新たなナノワイヤ面密度制御技術を確立した。 当初の目標達成に加え、“ZnOナノワイヤ埋め込み構造”が、ZnO膜と比較してゼーベック係数の大幅な増大を実現するという発展的な成果も挙げた。この増大メカニズムを明らかにするため、ゼーベック係数の温度依存性を実験的、理論的に調査した。この結果、高品質なナノワイヤ界面に形成されるエネルギー障壁により、高エネルギー電子の弾道的な伝導が生じ、ゼーベック係数が増大するという新たな概念を提示した。本成果を第14回日本熱電学会にて報告し、優秀ポスター賞を受賞したことからも対外的に影響力の高い成果であることは分かる。 また、従来困難であった、ゼーベック係数の測定方法を確立し、値の定量性を向上させることにも貢献した。有限要素法により、試料内の二次元熱分布を考慮した場合、熱電対の接触具合により数%の誤差が生じることが分かった。また、“真空中”、及び“大気中”の異なる2つの測定環境を想定したところ、両者で、ゼーベック係数値に差は生じないことも分かった。この理論的な知見をもとに、毎回、熱電対の接触誤差が少なくなるように、測定装置を改良し、ゼーベック係数の測定精度を向上した。 このように、H29年度の目標(ナノドットによるナノワイヤの高面密度成長)を達成するだけに留まらず、新たな熱電性能向上方法論の提案、ゼーベック係数の測定手法の確立、といった発展的な成果を挙げた。これより、本研究のH29年度の実績としては、当初の計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最大の目標は、ZnOナノワイヤ埋め込み構造において、低次元構造による出力因子増大と同時に、ナノワイヤ界面でのフォノン散乱増大による熱伝導率の低減を同時実現することにある。H29年度は、①ナノドットによるナノワイヤの高面密度成長、②“ZnOナノワイヤ埋め込み構造”で、出力因子の大幅な増大、③信頼性のあるゼーベック係数測定方法の確立、以上3点に関して成果を挙げた。そこで、H30年度は、①ナノワイヤ導入による熱伝導率低減の観測、及び②出力因子増大メカニズムに寄与する障壁エネルギー生成要因の解明を目指す。 以下、具体的内容を述べる。 上半期(4月~9月)では、ナノワイヤ面密度と熱伝導率の関係を明らかにする。まず、ナノワイヤを含まない薄膜とZnOナノワイヤ埋め込み構造の熱伝導率を比較し、ナノワイヤ導入効果を明らかにする。また、熱を輸送するフォノンは、様々な平均自由行程を有するため、フォノン散乱に寄与するナノワイヤ界面の間隔を変えることで、熱伝導率を制御できると期待できる。そこで、熱伝導率のナノワイヤ面密度依存性を観測する。この際、ナノワイヤ、及びその面密度制御用ナノドットの原料(研究奨励費の主要購入品)を購入し、多数の試料作製を行い、最適な面密度と熱伝導率の関係を明らかにする。 下半期(10月~3月)では、出力因子増大に影響を与えたナノワイヤ界面の障壁エネルギーの生成要因について、結晶構造・組成の観点から明らかにする。これまでの実験結果より、そのナノワイヤ界面はエピタキシャル界面であることが予想される。そこで、透過型電子顕微鏡により、ナノワイヤ界面の成長様式を明らかにする。さらに、障壁エネルギーの生成要因として、ドーパント濃度の変調が考えられる。そこで、組成分布をEDX測定により明らかにする。
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Research Products
(8 results)