2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J00345
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
門屋 祥太郎 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 金属・樹脂直接接合 / 射出成形 / 陽極酸化処理 / インサート成形 |
Outline of Annual Research Achievements |
構造物軽量化の需要拡大に伴い,金属と樹脂の接合技術が広い分野で要求されるようになっている.中でも金属表面粗化と樹脂射出成形を組み合わせた手法は,材料選択性や生産性の高さなどから特に注目されている.しかしこららの直接接合技術は,接合メカニズムが十分に解明されていないなどの点から本格的な実用化には至っていない.本研究では金属表面構造のサイズに着目して,それぞれのサイズでの接合強度や樹脂転写性を評価することで接合メカニズム解明を目指している.平成29年度は,以下の項目について研究を行った. (1) 陽極酸化処理によるナノ表面構造の作製:陽極酸化処理を用いてアルミニウム合金上に数十ナノメートルの構造を形成した.処理条件を制御することで孔の直径や孔密度などを変化させた.最小で70ナノメートル程度といった小さい構造を作製した. (2) 射出成形による接合成形品の強度評価:(1)で得られたアルミニウム合金試験片を用いて射出成形実験を行い,接合成形品を作製した.(1)における陽極酸化処理条件を変えることで接合強度が変化するという結果が得られた.特に孔密度(表面中の孔構造の数)が接合強度に大きく影響することが確認された.また樹脂成形条件についても調査を行い,先行研究で特に接合強度への影響が大きいことが指摘されている樹脂射出速度について検証を行った.陽極酸化処理によるナノ構造では,樹脂射出速度と接合強度の間に負の相関があることが確認された. (3) 接合強度向上のための金型真空吸引の検証:より高い接合強度を実現するために,射出成形において金型真空吸引工程を取り入れた.これは,樹脂が金型に流入する前に型内を排気することで樹脂の転写性向上を狙うものである.型内の真空度を制御して成形したところ,金属表面処理の種類によって接合強度が向上する場合と低下する場合があるという結果が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は,(1)陽極酸化処理によるナノ構造の作製,(2)ナノ構造を利用した接合成形品の接合強度評価,(2)金型真空吸引システムの確立,を目標とした.(1),(2)については最大で20MPa程度の引張せん断強度が得られ,また樹脂射出速度の影響を評価した.(2)については接合用金型内を排気する機構を構築し,実際に30kPa程度まで減圧が可能であることを確認した.またいくつかの表面処理を用いて成形実験を行い,接合強度と型内真空度の関係を調査した.以上,当該年度の目標を概ね達成しており,順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
陽極酸化処理を用いて数百ナノメートルといった比較的大きな孔構造を作製し,孔が小さい場合との接合性の比較を行う予定である.また本年度で行った接合強度評価に加えて電子顕微鏡などを用いた接合試料断面評価によって樹脂転写性や化学結合性の調査を行い,異なる表面構造,成形条件における樹脂の流入状態を明らかにすることを目指す.
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