2017 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト再プログラム化中間(iRS)細胞による新たな機構解析システム
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17J00350
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
勅使河原 利香 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 再プログラム化 / 再プログラム化中間細胞 / ヒトiPS細胞 / ゲノム編集 / OCT4 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト体細胞はiPS(人工多能性幹)細胞への再プログラム化に伴い複数の段階を経るため、再現性のある分子機構解明は困難を極めている。申請者の研究グループが世界で初めて樹立したヒト再プログラム化中間(iRS)細胞株は信頼性の高い機構解明に役立つと考えられる。iRS細胞は単一細胞からの増殖が可能、かつ、培養条件の変更によりiPS細胞への再プログラム化を再開できる。2016年度の研究では、我々は単一細胞からのクローニングが容易なiRS細胞でのゲノム編集応用により、再プログラム化に重要な遺伝子OCT4の発現を可視化するOCT4-GFP(OG)-iRS細胞を作製し、OCT4活性について解析した。成果として、再プログラム化におけるOCT4遺伝子の活性時期と不安定性について初めて明らかにした。 2017年度は、ヒト体細胞再プログラム化過程における遺伝子発現変動の更なる解明を目的に、再プログラム化中間細胞を用いて複数の遺伝子の発現変動を複数の蛍光で、同一の細胞内で観察できる“マルチカラー再プログラム化可視化システム”の作製に取り組んだ。具体的には1)再プログラム化後のマイクロアレイ解析データより可視化候補遺伝子(LIN28、FOXO1)を選定し、2)OG-iRS細胞への追加のゲノム編集による候補遺伝子可視化細胞株の作製を行った。 今後は、細胞株の樹立、及びリアルタイムでの遺伝子変動観察による遺伝子間の関連性解明を行う予定である。マルチカラー再プログラム化可視化システムは、再プログラム化に伴い発現変動する2つ以上の遺伝子の発現変動を同一細胞内で観察できる初のシステムである。当システムの完成はヒトiPS細胞の品質の安定化等に繋がる分子機構解明に貢献する事が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度は、2つ以上の遺伝子の発現変動のリアルタイム解析を可能にする“マルチカラー再プログラム化可視化システム”の樹立に取り組んだ。 現在までの進歩状況として、1)可視化候補遺伝子の選定、2)遺伝子発現可視化のためのゲノム編集、3)2つの遺伝子の発現を緑色蛍光・赤色蛍光で示す細胞コロニーの確認が完了しており、おおむね順調に進展している。 1)可視化候補遺伝子の選定:LIN28とFOXO1の2つの遺伝子を可視化候補遺伝子として決定した。選定には全般的遺伝子発現解析のデータを用いており、LIN28とFOXO1はiRS細胞の再プログラム化再開後(1~10日目)、OCT4活性化に続き十分量の発現量上昇を示していた。解析のためのcDNAライブラリーは再プログラム化再開後のコロニーからピックアップした単一細胞に由来する。 2)ゲノム編集:OCT4遺伝子の発現を可視化するOCT4-GFP(OG)-iRS細胞(Teshigawara et al., 2016)の内在性LIN28、FOXO1遺伝子の各ストップコドン下流にmCherry遺伝子を挿入した。効率的な遺伝子組み換えのため、CRISPR/Cas9ゲノム編集システムを使用した。具体的な手順としてⅰ)LIN28-mCherry、FOXO1-mCherryのプラスミド、 CRISPR/Cas9プラスミドの作製、ⅱ)各プラスミドをエレクトロポレーション法によりOG-iRS細胞へ導入、ⅲ)薬剤セレクション後の細胞株化、ⅳ)Cre-LoxPステムによる薬剤耐性配列の除去・細胞株化を行った。 3)GFP(緑)・mCherry(赤)の両蛍光を示すコロニーの確認:OCT4遺伝子発現を示す緑色蛍光陽性、且つFOXO1の遺伝子発現を示す赤色蛍光陽性コロニーを確認した。LIN28-mCherry OG-iRS細胞については現在、細胞株化を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、1)LIN28-mCherry OG-iRS細胞コロニーの樹立、2)可視化コロニーの経日的な観察による各遺伝子の発現変動の観察、3)マイクロアレイデータとの比較 を予定している。 1)LIN28-mCherry OG-iRS細胞コロニーの樹立:シングルセルクローニングにより細胞株化。再プログラム化再開後10日目、顕微鏡下でOCT4-GFP陽性のiPS細胞コロニーが、赤色蛍光(LIN28-mCherry遺伝子発現)を示すことを確認する。 2)可視化コロニーの経日的な観察: LIN28-mCherry OG-iRS細胞、FOXO1-mCherry OG-iRS細胞の再プログラム化再開後、1,3,6,10日目にOCT4遺伝子発現を示す緑色蛍光と、LIN28、FOXO1の発現を示す赤色蛍光を顕微鏡下で観察する。具体的には、GFP(緑)・mCherry(赤)の発現上昇順・発現安定性を確認する。 3)マイクロアレイデータとの比較:OCT4、LIN28、FOXO1の遺伝子発現変動のタイミングが経日的マイクロアレイデータと一致するか、比較・検討する。 1)~3)の達成は、“マルチカラー再プログラム化可視化システム”の有用性を確認・証明する。iRS細胞を用いた当システムは、再プログラム化における遺伝子発現プロファイルのビッグデータ解析等のドライの実験データと、ゲノム編集による発現可視化等のウェットの実験データの比較検討を可能にする。結果として、シングルセル単位の、より再現性・信頼性の高い再プログラム化機構解析に貢献する。
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Research Products
(2 results)