2017 Fiscal Year Annual Research Report
DNA修復機構の破綻に伴う大腸癌のゲノム・エピゲノム解析
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17J00386
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 一仁 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 融合キナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
1) DNAミスマッチ修復機構の破綻した大腸腫瘍、すなわち高頻度マイクロサテライト不安定性を呈する149の大腸腫瘍の全エクソン解析を行い、後天的体細胞変異及び生殖細胞系列のDNAミスマッチ修復遺伝子変異(リンチ症候群)を同定した。KRAS変異やAPC変異やPIK3CA変異はリンチ症候群に多く、BRAF変異やRNF43変異はリンチ症候群には少ないことが明らかになった。 2)リンチ症候群が疑われる症例に対して、ミスマッチ修復蛋白の免疫染色を行った。MLH1の変異があると予想された症例に対し、ポリメラーゼ連鎖反応で変異の同定を試みたところ、MLH1遺伝子の1,221塩基の欠失という大きな構造変異が1例に同定できた。 3) 111の高頻度マイクロサテライト不安定性を呈する大腸腫瘍のRNAの融合遺伝子解析を行い、発癌ドライバ変異の同定を試みた。すると、治療標的となり得る融合キナーゼがKRASやBRAFのドライバ変異のない高頻度マイクロサテライト不安定性を呈する大腸癌約40例のうちの11例と、比較的高頻度に認められることが明らかとなった。 4) KRAS,BRAFおよび融合キナーゼの各ドライバ変異が相互排他的であったことに着目し、高頻度マイクロサテライト不安定性を呈する大腸腫瘍の各ドライバ変異別の生存解析を行ったところ、融合キナーゼ群はKRAS発癌ドライバ変異群よりも、再発後の予後が有意に不良であるということが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定以上に症例を収集でき、高頻度マイクロサテライト不安定性を呈した149の大腸腫瘍の全エクソン解析を行うことができた。 全エクソン解析のみでは捉えきれないMLH1の1221塩基の欠失という大きな構造変異を、ミスマッチ修復蛋白の免疫染色でMLH1に機能喪失型変異があると予想し、さらにゲノムDNAのポリメラーゼ連鎖反応を行うことで同定することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
高頻度マイクロサテライト不安定性を呈する症例を更に集積することで、本邦においてどれだけの割合で、治療標的となり得る融合キナーゼがあるのか、頻度を確立し、実際に治療に結びつけることを目指す。
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