2017 Fiscal Year Annual Research Report
メトホルミンによるがん幹細胞マーカーCD133発現抑制機構の解明
Project/Area Number |
17J00434
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
前原 経 北海道大学, 生命科学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | CD133 / メトホルミン / がん幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は申請書に記載した実験内容に従って実験を行った。 ①【CD133の5つのプロモーター活性に対するメトホルミンの影響の検討】HCC細胞株ではP1プロモーター活性が最も高く、メトホルミンもこのP1プロモーター活性を低下させた。さらに、P1プロモーター領域を徐々に短くした欠損変異体プラスミドを用いた解析から、メトホルミンの作用を受けるプロモーター領域の絞り込みに成功した。 ②【メトホルミンによるCD133の発現抑制がAMPKを介するか否かの検討】HCC細胞株にメトホルミンを作用させると同時にAMPKをノックダウン(あるいはAMPK阻害剤を添加)した結果、メトホルミンによるCD133発現抑制が大幅に解除された。この結果から、メトホルミンによるCD133の発現抑制は少なくとも一部はAMPKを介していることが示唆された。 ③【メトホルミンによるがん細胞内の遺伝子発現(主に転写因子)の変化についての網羅的解析】DNAマイクロアレイを用いて、メトホルミンによって発現が変化する遺伝子を網羅的に解析した。発現が変化した遺伝子の中から、①の結果でメトホルミンの作用を受けるP1プロモーター領域に対して結合し得る遺伝子を抽出した。その結果、3つの転写関連因子(遺伝子A,遺伝子B,遺伝子C)を新規候補遺伝子とした。 ④【候補遺伝子の発現がCD133の発現に影響を与えるかどうかの検討】3種類の候補遺伝子をクローニングし、それぞれの発現プラスミドを用いてP1プロモーター活性に与える影響を検討した。その結果、遺伝子Cの過剰発現によってP1プロモーター活性の変化が認められた。一方、遺伝子Aおよび遺伝子Bに関してはP1プロモーター活性に影響を与えなかった。これらの結果から、候補遺伝子CがメトホルミンによるCD133の発現抑制に重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画書と比較すると、メトホルミンが作用する候補遺伝子での実験が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度も申請書に記載した内容に従って研究を実施する予定である。 ①【候補遺伝子の発現がCD133の発現に影響を与えるかどうかの検討】本年度では候補遺伝子によるプロモーター活性への影響のみの検討であったため、CD133のタンパク発現、mRNA発現に関しても検討する。また、候補遺伝子Cが実際にP1プロモーターに結合するかどうかに関してChIP、EMSAなどの方法を用いて検討する。 ②【候補遺伝子の発現が腫瘍形成能に与える影響の検討】HCC細胞株を用いて、候補遺伝子の安定過剰発現株・安定knockdown株を作成し、足場非依存的な腫瘍形成能をコロニーフォーメーションアッセイ、スフィアアッセイにより検討する(in vitro)。また、作成した細胞株をヌードマウスに移植し、腫瘍サイズの経時的変化の測定、移植した腫瘍細胞を再度分離してCD133の発現変化をFACSにより測定する。さらに、メトホルミン投与による影響(腫瘍サイズ、CD133の発現等)も併せて検討する。
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