2017 Fiscal Year Annual Research Report
新規アゴニストによるストリゴラクトン受容機構の解明と枝分かれの選択的制御法の開発
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17J00463
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
安井 令 東北大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 枝分かれ / ストリゴラクトン / 受容体 / 相互作用解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
1、ストリゴラクトン(SL)受容機構の解明 これまでに獲得している新規SLアゴニストがシロイヌナズナのD14タンパク質オルソログであるAtD14によって加水分解されるか否かについて検討した。本試験では、反応溶液に含まれる基質の量を経時的に測定することで酵素反応の進行を評価することにした。そこで、まず初めにLC-MS/MSにおける新規SLアゴニストの分析条件を検討した。その後、実際にAtD14と新規SLアゴニストの加水分解反応を行い、確立した分析条件に従って、反応溶液に含まれる新規SLアゴニスト量を測定した。その結果、反応溶液に含まれる新規SLアゴニスト量の減少は認められなかった。したがって、新規SLアゴニストは、AtD14によって極めて加水分解されにくい化合物であると考えられた。本化合物は、AtD14と安定な複合体を形成すると予想され、リガンドの結合によって構造変化したAtD14を観察することに利用できる可能性が高い。 2、枝分かれの選択的制御法の開発 まず、新規SLアゴニストをリード化合物とする24の類縁化合物を獲得し、AtD14との相互作用をDifferential Scanning Fluorimetory(DSF)法によって評価した。本手法において、SLまたは新規SLアゴニストの添加時にD14ファミリーの熱変性温度は低下することが明らかになっている。そこで、類縁化合物についても同様に、DSF法によるAtD14との相互作用解析を実施した。その結果、9化合物がAtD14の熱変性温度を低下させた。続いて、これらの9化合物をシロイヌナズナの胚軸伸長阻害試験に供した。その結果、既知のSLアナログと比較すると弱いながらも、リード化合物と比較して、1化合物がわずかに強く、胚軸の伸長を阻害した。したがって、本化合物は枝分かれについても同様に、リード化合物よりも高い活性を示す可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、これまでに獲得している新規SLアゴニストがAtD14によって極めて加水分解されにくい化合物であることを明らかにすることができた。本試験を実施するにあたって、AtD14を大量に発現・精製する必要があったが、大腸菌を用いた組換えタンパク質の発現系と各種のアフィニティーカラムを利用することによって、目的タンパク質をスムーズに大量調整することができた。上述の通り、このような化合物は、AtD14と安定な複合体を形成する可能性があり、SL受容機構の解明に貢献することが期待される。また一方で、研究実施計画通りに、新規SLアゴニストよりも活性が高いことが予想される類縁化合物を1化合物獲得することができた。このような化合物を獲得するにあたって、当初は20の類縁化合物を準備していた。しかしながら、これらの類縁化合物の中からは、リード化合物よりも高い活性を有する化合物を見出すことはできなかった。そこで、リード化合物と類縁化合物を比較し、AtD14との相互作用に重要だと予想される化学構造を検討した。そして、得られた知見に基づき、新たに4化合物を化学合成し、これらの活性を調べた。その結果、上述の通り、目的の活性を有する1化合物を獲得することができた。本化合物は、根寄生植物の種子発芽誘導活性を有していないことが示唆されており、枝分かれの選択的制御法の開発に貢献することが期待される。このような進捗状況から、本年度は研究実施計画に対して一定の成果が得られていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、まず初めにゲルろ過法を用いたAtD14と新規SLアゴニストの親和性の評価に取り組む。その後、得られた知見に基づき、実際にAtD14と新規SLアゴニストの複合体の結晶構造解析に臨む。結晶構造解析は、所属大学内での共同研究として実施し、結晶化条件の検討には、市販のキットを購入し利用する予定である。そして、獲得した複合体の結晶構造とAtD14単独の結晶構造を比較し、新規SLアゴニストによって誘導されたAtD14の構造変化を明らかにする。並行して、研究実施計画通り、シロイヌナズナの胚軸伸長をリード化合物よりも強く阻害した類縁化合物について、その枝分かれ抑制活性を調べる。具体的には、シロイヌナズナのSL欠損変異体に本化合物を外部から投与し、その枝分かれ過剰な表現型が回復されるか否かを確かめる。また更に、本年度の研究によって、AtD14との相互作用に重要な類縁化合物の化学構造が予想されているため、その化学構造をもとに新たな類縁化合物をデザインし、化学合成する。これらの類縁化合物の生物活性についても、これまでと同様に、DSF法によるAtD14との相互作用解析、シロイヌナズナの胚軸伸長阻害試験によって評価し、有力な化合物はシロイヌナズナの枝分かれ抑制試験に供する。そして適宜、このような化合物の根寄生植物の種子発芽刺激活性について調べる。以上の実験を通して、枝分かれに対して選択的に作用する高活性の新規SLアゴニストを創出することを目指す。
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