2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J00466
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
鈴木 航介 広島大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 準モンテカルロ法 / マルコフ連鎖準モンテカルロ / トーズワース法 / フロロフ積分則 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.トーズワース法で生成された3次元点列の一様性: マルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC)の脱乱択化として,トーズワース法とよばれる手法で生成された点列を考察した.最長周期を仮定すれば,この点列をまとめて作る高次元点列はデジタルネットとよばれるクラスに属する.私は,共同研究者らとともに,本方法で生成した3次元デジタルネットが,t値の意味で最良の一様性をみたさないことを証明した.すなわち,t値の意味で最良の一様性をみたすとき,トーズワース法の遷移行列は特定の行列と下三角行列を介して相似であることを示し,その帰結として,遷移行列の位数は必ず3となることを示した.したがって,この場合最長周期とはならない. 2.多項式版Frolov積分則の定義とその一様性: 境界で0になる関数を上手に積分する決定論的積分則としてFrolov積分則が知られている.私は,共同研究者らとともに,多項式版Frolov積分則を定義し,その性質を考察した.とくに,まずわれわれはデジタルネットの概念を無限精度(すなわちビット長が無限の場合)に拡張した.さらにデジタルネットt値がその双対格子上の最小NRT重みと対応するという双対定理を無限精度の場合に拡張した.これらの準備の下で,われわれはアドミッシブルとよばれる,良い性質を持った格子を用いた多項式版Frolov積分則において,積分ノードのt値が一様に上から押さえられることを示した.さらに,そのような多項式版Frolov積分則の列を作ることに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究1では,マルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC)の脱乱択化として,トーズワース法で生成された点列を考察した.トーズワース法は,乱数生成にも用いられる方法であり,最長周期を仮定すれば,この点列をまとめて作る高次元点列はデジタルネットとよばれるクラスに属する.私は,適切にパラメータを調整することで,(乱数生成の場合と同様に)本クラスに属する点列の中にMCMCの脱乱択化に適切な点列が存在するのではないかと考えていた.そのために,t値と呼ばれる一様性について研究した.予想に反し,本方法で生成した3次元デジタルネットが,t値の意味で最良の一様性をみたさないことを証明した.したがって,本手法をMCMCの脱乱択化として用いる場合,すべての次元での最良性をあきらめるか,均等分布性などのより緩い性質での最良性を調べる必要があるということが帰結される.この結果は,真に作りたかったものがこの方法では作れない,という方向の結果なので,今後の研究の方向性を指し示す結果といえる. 研究2においては,多項式版Frolov積分則の一般化を考察した.連続な場合の知識をもとにデジタルの場合を考えるという戦略は,すでに格子則とデジタルネット則との類似として有用性が証明されている.本研究では,技術的な困難を乗り越え,このアイデアをFrolov積分則に対して実行することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
マルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC)の脱乱択化においては,これまでの研究によって,トーズワース法では3次元での場合すらt値を最良にできないことがわかった.したがって,トーズワース法とは別の,より複雑な乱数生成法をとりいれる,もしくは,t値ではない,できれば整数値ではなく連続実数値をとるような尺度を用いて点列を最適化する,といった形に問題を置き換えることで研究を進める.モンテカルロ法の脱乱択化においては,Frolov積分則の積分ノードの構成アルゴリズム,多項式Frolov積分則と高次の収束,一般の積分領域,超高次元の積分などについて考察する.Frolov積分則は非積分関数の滑らかさを知らなくても,それに応じて自動的によいオーダーで誤差が減衰する.今回はt値のみに注目したが,この自動フィッティングの性質が多項式版Frolov積分則でも成り立つかどうかを調べる.
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