2017 Fiscal Year Annual Research Report
ものづくりのスマート化に寄与する究極的プラズマ接合プロセスの確立
Project/Area Number |
17J00523
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
古免 久弥 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 粒子法 / 溶滴移行現象 / アークプラズマ |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の前半はこれまでの研究で構築したSPH(Smoothed Particle Hydrodynamics)法を用いた溶融金属の数値解析モデルを応用し,一般的な溶接法であるGMA(Gas Metal Arc)溶接における,溶融した電極の輸送現象の数値解析モデルの構築を行った.このモデルでは,溶融した金属にはたらく駆動力として,重力,ローレンツ力,表面張力,気流とのせん断力,気流から受ける圧力を考慮した.特に気流とのせん断力および気流から受ける圧力は溶融した金属の位置や形状によって力の作用の有無や力の作用する方向が変化するため,これらを個別に考慮することは困難であった.そこでこれらの駆動力をまとめて1つの抗力とし,独自のモデル化を行った. 計算の結果,溶融した金属が固体の電極先端で液滴を形成し,ローレンツ力や重力,表面張力によって電極先端から離脱する様子がシミュレートできた.この液滴の形成と電極先端からの離脱はおおよそ周期的に起こっており,プロジェクト移行と呼ばれる移行形態に近い液滴の輸送現象が再現できた.また,液柱がまとまって形成された液滴の直径や輸送速度等が実験と計算でよく一致し,本研究で構築した数値計算モデルの妥当性を示した. これらの研究成果は,2件の国際学会で口頭発表を行った.また国際誌に論文を1本投稿し,掲載された. 昨年度後半は上記の計算モデルの高速化を行いながら,実験装置の設計を行った.装置は現在作製中であり,出来次第,制御用のソフトウェアを組み込んで実験を行う予定である. その他の研究活動として,2017年7月に上海で開催された70th IIW Annual Assembly and International Conferenceに参加し,アーク溶接に関する最新の研究の動向を調査した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度はプラズマによる金属の溶融現象のモデル化と妥当性の検証,そして実験装置の設計製作を行った. 新たに構築したSPH法を用いたアークプラズマ中の電極の溶融現象の数値演算モデルは,これまでの研究で培った数値演算モデルを応用して作成した.シミュレーションの結果,実際の溶融金属液滴の成長・離脱過程を再現することができた.また,電極が溶けて伸びた液柱の長さや,液柱がまとまって形成された液滴の直径などの計算結果は実験観察から得られた測定結果とよく一致した.この研究成果から,今後溶融した金属の形状に合わせて熱源であるプラズマを解く数値演算モデルを導入する必要があるものの,本研究の目的である熱プラズマによる材料の溶融,接合現象をシミュレーション可能な数値演算モデルの基礎の構築が完了したといえる. これらの結果は2017年9月にドイツのハノーファーで開催されたV International Conference on Particle-based Methods. Fundamentals and Applications PARTICLES 2017および2017年11月に仙台で開催されたFourteenth International Conference on Flow Dynamicsにおいて口頭発表を行い,粒子法の専門家達と有意義なディスカッションを行うことができた.また,国際誌のJournal of Flow Control, Measurement & Visualizationに掲載された. 実験装置の作製にやや遅れがみられるものの,上記の通り数値解析モデルの構築に成功しており,全体の進捗はおおむね順調であると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は前年度に引き続き実験観察を試み,接合面がわからないほどの完全な接合を達成できる新溶接プロセスの開発を行う.そして,制御パラメータとなる電流値や電源波形の他,通電時間や加圧力等を変えながら溶接を行うことで,各パラメータが接合部の強度に与える影響を調査する.この調査結果から,最も接合強度が高くなる最適な溶接条件の選定を行う. また数値演算モデルにおいては,前年度に構築した粒子法の解析モデルに格子法によるプラズマの解析モデルを組み合わせ,被溶接材料間の微小空間に形成されるプラズマの影響を考慮した統合数値演算モデルを構築する.数値解析モデルの完成後,材料や溶接雰囲気の物性値を変更し,本研究で構築した統合モデルを用いた仮想実験によるプラズマの設計を行う.仮想実験の結果は同条件の実験結果と比較することで,統合モデルの精度を確認する.また,モデルの精度と解析にかかった時間の両方を考慮し,溶接シミュレータとしての性能を評価する. これらの研究成果の一部は2018年7月にバリで開催される71st IIW Annual Assembly and International Conferenceで発表する予定である.
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