2017 Fiscal Year Annual Research Report
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17J00603
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
横田 祐美子 立命館大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | ジョルジュ・バタイユ / 思考 / エロティシズム / 文学 / 哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、ジョルジュ・バタイユにおける「非-知」という思考の特徴を考察することに主眼を置き、そのうえで文学と哲学の架橋を試みる研究を行った。 まず、本研究の基盤形成のため、6月から7月にかけてパリ国立図書館等で日本国内では入手の難しい資料の収集を行った。 次に、9月にはブルガリアで開催された「哲学とその他者」という国際フォーラムにご招待いただいた。ここでは、ブランショから出発し、ニーチェを経由することで、バタイユにおける思考と恐怖の関係、そして哲学との関係を明らかにした。 そして、10月には立命館大学「暴力からの人間存在の回復」研究会にてワークショップ「実存思想の展開可能性」をオーガナイズする機会をいただき、他大学の若手研究者とともに研究発表を行った。ここでは、バタイユが実存を語るのに適した形式として「文学」や「詩」、「叫び」を挙げていることを踏まえたうえで、言語そのものが本質的に有している意味の変容こそがバタイユの思考において肝要であることを論証し、実存を語る上記の形式がなんら哲学と対立するものではないことを明らかにした。 さらに、2017年11月の日本フランス語フランス文学会関西支部大会では、バタイユのエロティック小説『マダム・エドワルダ』と思想書『内的体験』を接続する研究発表を行った。本発表は当日の発表審査結果から『関西フランス語フランス文学』第24号に掲載されることとなった。ここでは、『マダム・エドワルダ』と『内的体験』が互いを互いの鍵としなければ理解しえないとバタイユ自身によって規定されていることを踏まえて、両著作を架橋しながら娼婦と神、そして思考という主題の絡みあいを明らかにした。 以上の研究成果は、バタイユの思考論とエロティシズム論を接続し、「思考のエロティシズム」という新しい解釈路線を支えるためのきわめて重要なものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度は、エロティシズムの作家・思想家としてのバタイユ像と「非-知」という特異な思考を論じた知的・哲学的バタイユ像を分離することなく統合するという本研究課題の基本方針のもと、国内外における様々な研究発表・論文執筆を精力的に行い、着実に本研究の基盤を形成し、今後の展開を視野にいれた考察を行うことができた。この点で本研究の進捗状況は順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、バタイユにおける「思考のエロティシズム」の内実を明らかにしたうえで、思考とエロスの関係史を踏まえた他の思想家との比較研究を行う予定である。というのも、思考とエロスの不可分な関係は古代ギリシャの哲学者プラトンにまで遡ることができ、思考とエロスの関係史のなかでバタイユの「思考のエロティシズム」の独自性を検討しなければならないからである。 最終的には、これまでと今後の研究成果をまとめた博士論文を提出する予定である。
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Research Products
(4 results)