2018 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular physiology underlying temperature acclimation of animal
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17J00642
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
岡畑 美咲 甲南大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 温度馴化 / 多型株 / 酸素 / カリウムチャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
カリウムチャネルKQT-2の変異体は野生株よりも低温に馴化するスピードが早くなる異常を示し、この異常は大きな寒天培地で飼育した際に顕著に異常が強くなった。そこで、kqt-2変異体の飼育空間依存的な低温馴化に関わる細胞を同定するに着想した。kqt-2遺伝子はASKとADL頭部感覚ニューロンと腸で発現しており、kqt-2変異体の低温馴化異常は、ADL感覚ニューロン特異的にkqt-2遺伝子を発現させることによって回復した。kqt-2変異体はADLの温度変化に対する神経活動の低下がみられたことから、KQT-2は野生株においてADLの神経活動を活性化させる働きをもつことが示唆された。ADLは、酸素受容ニューロンURXで酸素情報が受容されることにより活性が変化することが知られている。そこで、ADLとURXの関連性を調べるために、kqt-2の変異体にURXで酸素受容体として働くGCY-35の変異を導入し、gcy-35;kqt-2二重変異体の低温馴化を測定した。その結果、kqt-2の低温馴化異常はgcy-35変異によって抑圧された。以上の結果から、ADL感覚ニューロンにおいてカリウムチャネルKQT-2は、URX酸素受容ニューロンからの酸素情報依存的に温度情報伝達を制御していることが示唆された。 温度適応性の獲得に重要な遺伝子の多様性を明らかにするため、多型株間の温度馴化を解析したところ、オーストラリア産AB1株は新しい温度に馴化するのが早く、ハワイ産CB4856株は遅かった。この温度馴化スピードの違いを決める遺伝子多型を同定するために、次世代DNAシーケンサーを用いて全ゲノム配列を決定し、ゲノムデータベースを作成した。これらのSNP情報と単離した組換え系統を駆使して、遺伝学的解析を行ったところ、候補遺伝子のひとつの変異体で温度馴化の異常が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
線虫C.elegansを用いた動物の温度応答メカニズムの解明を目指し、2つのアプローチから解析を行い、温度馴化スピードに関わるカリウムチャネルKQTの解析も順調に進み、カリウムチャネル KQT-2 を介した酸素情報依存的な低温馴化制御のシンプルな神経経路を同定したため(Okahata et al., Science Advances, 2019)。 また、世界各地の C.elegansの温度馴化に関わる原因遺伝子多型の候補が絞られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
世界各地のC. elegans多型株の温度馴化を解析し、温度馴化の多様性に関わる原因遺伝子多型をI番染色体の中央にマッピングした(Okahata et al., Journal of Comparative Physiology B, 2016)。さらに現在、候補遺伝子がひとつに絞り込まれているため、この遺伝子が温度馴化の多様性に関わる遺伝子多型であるかを解析し、動物の温度適応の新規機構と進化的側面を明らかとする。 具体的には、下記の通りである。 同定した遺伝子が原因遺伝子多型であるかを調べるため、 AB1 型と CB4856 型の多型をもつ遺伝子断片を候補遺伝子の変異体に導入し、 低温馴化を測定する。その後、候補遺伝子の低温馴化における機能細胞を同定するために、GFP を用いた発現細胞の解析と、発現が見られた細胞特異的に候補遺伝子のを発現させ、低温馴化の変化を解析する。
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Research Products
(18 results)