2018 Fiscal Year Annual Research Report
Precise Measurement of Galaxy Cluster Mass via Weak Gravitational Lensing for Neutrino Mass and Dark Energy
Project/Area Number |
17J00658
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村田 龍馬 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
|
Keywords | 銀河団 / ダークマター / 宇宙の大規模構造 / 弱い重力レンズ効果 / すばる望遠鏡 / Hyper Suprime-Cam (HSC) / 観測的宇宙論 / ダークエネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
研究課題の目標である、銀河団の弱重力レンズ効果を用いたニュートリノ質量とダークエネルギーの性質の制限を、すばる望遠鏡のような可視光望遠鏡のサーベイデータを用いて遂行するためには、銀河団の質量(M)と質量に相関していると考えられている銀河団領域の赤い銀河の総数リッチネス(N)の関係(mass-richness関係)を制限する必要がある。私は、現時点で他のサーベイ望遠鏡と比べてより遠くの銀河団を観測することのできる、すばる望遠鏡のHyper Suprime-Cam (HSC)の弱重力レンズカタログと銀河団数の観測データから、HSCで観測された約2000個の銀河団のmass-richness関係を制限した。平成29年度に 私が中心となり開発した統計手法(Murata et al., ApJ, 854, 120, 2018)をさらに発展させた解析手法を用いた。標準的な宇宙論モデル(ΛCDMモデル)を仮定したときに、mass-richness関係がどう制限されるかを調べた結果、ニュートリノ質量やダークエネルギーの性質を制限するためにまず制限する必要がある、宇宙の物質密度や初期ゆらぎの大きさのパラメータを増加させたモデルを仮定すると、リッチネスNを固定したときの銀河団質量Mのばらつきが大きく、データから制限されることを示した。つまり、次の段階として、弱重力レンズ効果や銀河団数以外の独立な観測量(X線や銀河団-銀河団相関関数など)を用いて、銀河団質量のばらつきを制限することができれば、宇宙論パラメータが制限され、ニュートリノ質量やダークエネルギーの制限につながる可能性を示した。この成果は、私が中心となり、筆頭著者として1本の論文を執筆し、Publication of the Astronomical Society of Japan (PASJ)に投稿した。現在査読中である。プレプリントとして、公開されている(arXiv:1904.07524)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度には、すばる望遠鏡で観測されている銀河団で宇宙論解析をするために必要な、銀河団質量とリッチネスの関係を制限することに成功した。この結果から、少なくとも他の1つ以上の銀河団の観測量(X線や銀河団-銀河団相関関数など)を組み合わせて解析することで、宇宙論パラメータが制限でき、ニュートリノ質量やダークエネルギーの性質の制限につながる可能性をすばる望遠鏡の観測データから示すことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度に用いた解析手法に、X線や銀河団-銀河団相関関数などの他の観測量を加えることで宇宙論パラメータが制限できるか調べる予定である。加えて、今回の結果から、観測量であるリッチネスから銀河団質量を推定することができるようになったので、銀河団周りのダークマター分布が、銀河団質量の関数である標準的な宇宙論のシミュレーションのダークマター分布と、どのくらいよく一致するかを調べることを検討している。このためには、すばる望遠鏡Hyper Suprime-Camで観測されている、ダークマター分布によく従っていると考えられている銀河カタログを使用する予定である。銀河団周りのダークマター分布は、ダークエネルギーや重力理論の性質に依存することが従来研究から指摘されており、より遠くの銀河団や暗い銀河を観測できるすばる望遠鏡のデータを使って、これを調べることを検討している。
|