2017 Fiscal Year Annual Research Report
南極ドームふじ氷床コアを用いた気候変遷期の二酸化炭素濃度と全球平均海水温の復元
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17J00769
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
大藪 幾美 国立極地研究所, 研究教育系, 特別研究員(PD) (20758396)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 氷床コア / 南極 / 希ガス / 二酸化炭素 / 海水温 / 古気候 / フィルン空気 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、過去の全球平均海水温の指標であると考えられている希ガス(Ar, Kr, Xe)の存在比と同位体比および二酸化炭素濃度を、南極ドームふじ氷床コアを用いて分析することで、気候が大きく変遷した期間における全球平均海水温とCO2濃度の変動を復元し、両者の変化の相関関係や時間関係を明らかにすることを目的としている。 平成29年度は、希ガスの存在比・同位体比とCO2濃度を得るために、現有装置の改良と分析手法の確立に取り組んだ。希ガスの分析に関しては、空気試料から希ガスを抽出して分析するまでの一連の実験手法の開発にあたった。上記の希ガスを調合した混合標準ガスを作成し、それを使用して、質量分析計による各気体に最適な分析条件を決定した。また、現有装置を改良したうえで、大気試料中の希ガス以外の気体を除去する手法を確立した。氷床コア中の希ガス組成から海水温を復元するためには、氷床上部の通気層(フィルン)における分別過程を詳細に把握する必要がある。また、分析手法の確立のためには、現在の大気と異なる希ガス組成を持つ空気試料の多数回の分析が必要となる。そのため、南極沿岸部で採取されたフィルン空気の一部の分析を実施した。さらに、氷床コア試料の分析に向けて、希ガスの抽出装置を新たに製作し、他の氷床コア分析との作業工程の重なりがなく、効率よく分析が行える環境を整えた。 CO2濃度分析に関しては、まず切削抽出装置の改良方針を検討した。氷試料を切削するための回転刃を安定させる機構に、回転軸の延長線上の位置に新たに永久磁石を取り付ける方法を考案し、そのテストのための装置を設計した。現有装置を用いた氷床コア分析のテストにおいては、切削刃駆動部のセラミック製カップとステンレス製フランジの筐体の接続部に微少リークが発見された。原因究明の過程でセラミックカップの破損もあったため、該当部品を新規に製作した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
希ガスの標準ガス作成と、大気中の希ガス分析にかかる手法開発が進捗した。CO2分析に関しては、現有装置の改良を進めた。また、当初の計画を拡張し、フィルン空気の希ガスや温室効果ガスを分析して氷床コアに含まれる気体成分の拡散と空気取込みによる分別を定量化するためのデータを取得したうえ、新たに希ガス抽出装置を製作した。さらに、第59次南極地域観測隊に参加し、南極内陸において最長152mの浅層氷床コアを掘削し、氷床コアの希ガスとCO2の濃度を分析するための手法確立と完新世後期の変動復元のための試料を取得したとともに、本研究に使用する予定の第2期ドームふじ氷床コアの日本への輸送を行った。このように、平成29度には氷床コアの測定を開始させるには至らなかったが、現有装置の改良や分析手法の確立に加えて、研究目的をより高いレベルで達成すべく、当初の計画より多くの課題を実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
希ガスの分析に関しては、まず新たに作成した抽出装置に対して最適な実験条件(ゲッター処理時間や、希ガスの試料チューブへの転送時間など)を確立する。その後、過去に掘削された氷床コア試料からの希ガスの抽出・分析の試験を行う。氷床コアからの希ガスの抽出・分析条件と精度を確立したのち、平成29年度に掘削した浅層コア等の実試料を用いて、希ガス存在比・同位体比のデータ取得を開始する。 CO2濃度の分析に関しては、切削装置の回転刃を安定させる機構の試験用装置を製作し、当該機構を完成させたのちに切削装置本体に組み込む。また、切削刃駆動部のセラミック製カップとステンレス製フランジの接続部の真空シールに関して、線径の異なるインジウム線や超高真空グリースの使用により確実なシール方法を確立する。その後、過去に掘削された氷床コア試料を用いて空気の抽出試験を行う。
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Research Products
(15 results)