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2017 Fiscal Year Annual Research Report

マングローブ林内土壌への有機炭素貯留における新メカニズムの提唱

Research Project

Project/Area Number 17J00808
Research InstitutionKobe University

Principal Investigator

木田 森丸  神戸大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)

Project Period (FY) 2017-04-26 – 2019-03-31
Keywordsマングローブ / 土壌有機炭素 / 溶存有機物 / 炭素循環 / ブルーカーボン
Outline of Annual Research Achievements

メインの調査地である石垣島吹通川マングローブ林においては,予定していた調査および研究を滞りなく実施し,成果についても英語論文で投稿中である.
石垣島マングローブ林では,当該生態系における天然有機物の分布特性と挙動を把握することを目的とし,主にマングローブ林河川水に溶けている「溶存有機物」およびマングローブ林土壌に存在する「土壌有機物」を研究対象とした.源流―マングローブ林内―海における溶存有機物の特性および組成変化の把握をおこない,マングローブ林から溶存有機物が供給されること,成分によって供給量や動態が異なること,および降雨の影響によって流域やマングローブ土壌からの各成分の供給量が増加することを見出した.
採択課題のメインであるマングローブ林内土壌への土壌有機物貯留におけるメカニズムとしては,マングローブ林内土壌の塩濃度を変動させた際の土壌有機物の挙動を検証してマングローブ林における新たな土壌有機物蓄積機序を提唱した.すなわち,塩濃度が高いことにより土壌有機物が凝集・固定化されて土壌中に保持されることである.塩濃度が高いことは全てのマングローブ林に共通の条件であるので,このコロンブスの卵のような新規メカニズムは全てのマングローブ林に通ずる普遍性があり,そのインパクトは大きい.
さらに,低土壌有機物含量のマングローブ林が世界的には主要であるにも関わらずそういったマングローブ林の土壌有機物の質的研究は不足していることを指摘し,石垣島吹通川マングローブ林の土壌有機物の特性を詳細に分析し,成分別の生物地球化学的・生態学的役割を区別して議論や考察をおこなう必要性を示した.

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

1年度目の予定は,1) 土壌Cの埋蔵量推定,2) 林内河川の難分解性DOC測定と凝集沈殿特性評価,3) 水文モデリングによる水の動きの解析および難分解性DOCマスフローの把握,であった.
1)については終了した.石垣島マングローブ林の土壌は平均深度が約1 mであり,土壌炭素貯蔵量(根は除く)は296 ± 56 Mg C/haであることが分かった.この値は世界平均(283 ± 193 Mg C/ha,Atwood et al., 2017)と同程度であった.2)については終了した.おおよそ4か月に一回のサンプリングを3年間継続し,季節や降雨,潮汐のタイミングなどが異なる様々な条件におけるDOC測定をおこなった.源流ーマングローブー海におけるDOCの動態(供給・沈殿)を解析した.また,林内土壌の脱塩洗浄をおこなった際に溶出したDOC溶液に再び海水塩を加えると,最大で71%(炭素換算)が再沈殿することを見出した.3)については測量調査を実施し、潮位変動に対応した水の動きを表現する水文モデリングを構築した。2)の分析結果と併せて難分解性DOCの量を計算中である。
これらに加え,林内土壌有機物(フミン酸・フルボ酸)の深度別(0-25, 25-50, 50-75, 75-100 cm)の詳細な化学構造特性解析をNMR分析と光化学的手法,元素分析によっておこなうことができた.これらは計画にはなかったことだが,成分別の生物地球化学的・生態学的役割を区別して議論や考察をおこなう必要性を示すことができ,マングローブ林生態系における物質循環を考えるうえで重要な結果である.
さらに,石垣島との比較として開始したタイのトラート川マングローブ林における調査・サンプリング・分析も進んでいる.よって評価は計画以上の進展とした.

Strategy for Future Research Activity

申請計画で予定していた今後の計画は,4)海水塩で沈殿する難分解性DOCの化学特性の分析,および5)マングローブ林土壌有機物の貯留における新メカニズムの提唱,であった.
4)については,高塩濃度によって沈殿している有機成分はフミン酸,もしくはフミン酸ー粘土複合体であると当たりを付けた.フミン酸についてはNMR分析などによって化学構造特性解析済みである.粘土は,イオン強度を低下させると分散することが知られているナトリウム型粘土鉱物であると考えている.塩濃度を低下させた際に分散する画分を多く集め,有機成分の構造特性解析および粘土鉱物の同定をおこなう.5)については今年度の結果のみから大枠を提唱することができたが,粘土鉱物の同定などをおこなうことでさらに細かい点まで追求する.
また,ここまでの結果における一貫した議論として,マングローブ林生態系における水文環境の重要性に気付いた,これからの研究においては,マングローブ林を水文環境によってグルーピングした後にそれぞれのグループを比較して物質循環や生態系サービスを論じることが必要であると思われる.その点についても考察を深めていきたい.

  • Research Products

    (4 results)

All 2018 2017

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results) Presentation (2 results)

  • [Journal Article] 石垣島吹通川マングローブ林流域における溶存有機物の動態2017

    • Author(s)
      木田 森丸、金城 和俊、大塚 俊之、藤嶽 暢英
    • Journal Title

      日本生態学会誌

      Volume: 67 Pages: 85~93

    • DOI

      10.18960/seitai.67.2_85

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] High salinity leads to accumulation of soil organic carbon in mangrove soil2017

    • Author(s)
      Kida Morimaru、Tomotsune Mitsutoshi、Iimura Yasuo、Kinjo Kazutoshi、Ohtsuka Toshiyuki、Fujitake Nobuhide
    • Journal Title

      Chemosphere

      Volume: 177 Pages: 51~55

    • DOI

      10.1016/j.chemosphere.2017.02.074

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] マングローブの生態系純生産量 (NEP) は本当に大きいのか?2018

    • Author(s)
      大塚俊之, 荒井秀, 友常満利, 吉竹晋平, 大西健夫, 藤嶽暢英, 木田森丸, 近藤美由紀, 飯村康夫, 金城和俊
    • Organizer
      第65回日本生態学会大会
  • [Presentation] タイ王国トラート川流域マングローブ林における溶存無機炭素の日変動:雨季と乾季における観測事例2018

    • Author(s)
      近藤美由紀, 高橋浩, 吉竹晋平, 木田森丸, 藤嶽暢英, Sasitorn Poungparn, Vilanee Suchewaboripont, 大塚俊之
    • Organizer
      第65回日本生態学会大会

URL: 

Published: 2018-12-17  

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