2017 Fiscal Year Annual Research Report
核酸-リガンド-タンパク質三成分複合体形成能を有する中分子化合物群の創製
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17J00931
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
谷藤 涼 東京農工大学, 大学院工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 化学-酵素ハイブリッド合成 / 天然物合成 / サフラマイシン |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに申請者らは、生合成酵素を活用するアプローチで核酸アルキル化能を有するアルカロイドの迅速合成法を確立した。本年度はこれを基盤として、窒素/酸素官能基に機能性ユニットを導入した新規類縁体の合成を1つの目標としていた。結果として、新たな天然物合成法の開発に成功した。 生合成酵素を利用して複雑な五環性骨格を構築するため、非天然型の基質アナログを合成した。このアナログは、酵素反応には不可欠であるが天然物合成の際には不要となるユニットを温和な条件下で切除できるよう、特定の官能基(アリルカルバメート基)を導入したものである。このアナログを基質とした酵素反応は、期待通り良好に進行した。得られた五環性骨格に対して有機合成的手法を用いて種々の官能基変換を施した後、パラジウム触媒を用いた反応により前述のアリルカルバメート基の切断に成功し、天然物サフラマイシンY3の全合成を達成した。これについては、新規化合物である基質アナログと天然物に至るまでの合成プロセス全体、得られる中間体化合物群に関する特許を出願した。また、国際学術誌への投稿を行い、現在追加実験と改訂作業を検討している。 また、7段階の反応を触媒して複雑な骨格を一挙に構築するこの生合成酵素の可能性をさらに拡げるため、予想生合成中間体の合成とその投与実験を行った。これまでの研究成果から、この生合成酵素への非天然型の予想生合成中間体の投与により、新規な骨格を得られる可能性が見込まれる。これを検証するため、天然型の予想生合成中間体を合成した。これを基質として酵素反応を行なったところ、ごくわずかではあるが目的の五環性骨格の構築を検出した。これにより、実際にこの中間体を経て五環性骨格構築が行われていること、更には中間体の投与による骨格構築が可能であることを明らかにした。現在、中間体の安定性向上と非天然型アナログの合成を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はこれまでに確立した、生合成酵素を活用するアプローチで核酸アルキル化能を有するアルカロイドの迅速合成法を基盤とし、窒素/酸素官能基に機能性ユニットを導入した新規類縁体の合成を1つの目標としていた。これを達成するため、アリルカルバメート基を導入した新規な基質アナログを合成した。このアナログを基質とした酵素反応は、期待通り良好に進行した。得られた五環性骨格に対して有機合成的手法を用いて種々の官能基変換を施した後、パラジウム触媒を用いた反応により前述のアリルカルバメート基の切断に成功し、天然物サフラマイシンY3の全合成を達成した。現時点では天然物合成に留まっているが、機能性ユニットの導入に向けた下準備は整ったものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在改訂中の論文の採択を目指し、新たにサフラマイシンAの合成を行う。 また、本年度は30年度以降の研究目標達成に向けて、核酸-リガンド複合体の形成を確認した。酵素反応で得られるものと同一の五環性骨格を有する天然物シアノサフラシンBを入手し、比較的短い合成DNA二重鎖との複合体形成を行なった。電気泳動の結果から、期待通り二本鎖を形成したDNAとの結合を示唆する結果が得られた。今後は合成したリガンドについて、DNA二本鎖との複合体形成能や、その配列選択性を迅速に評価できるプロセスを確立する。
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