2017 Fiscal Year Annual Research Report
ムカデが示す歩行・遊泳間の遷移現象から解き明かす生物の適応的運動機能の発現機序
Project/Area Number |
17J01042
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
安井 浩太郎 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | ムカデ / 運動パターンの遷移 / 多脚ロコモーション / 水陸両用ロコモーション / 大自由度制御 / 自律分散制御 / 数理モデリング / ロボット |
Outline of Annual Research Achievements |
生物は,身体に有する膨大な自由度を巧みに協調させることで,さまざまな状況変化に対して瞬時に適応的かつ多様な運動を生成する.こうした振る舞いに内在する制御原理を効果的に抽出するため,ムカデの水陸両用ロコモーションに着目する.ムカデは陸上においては脚運動による歩行を示す一方で,水上では胴体の屈曲運動による遊泳を示すなど,培地の物理的特性の違いに呼応して身体自由度の使い方を劇的に変化させる.本研究では,行動観察実験,数理モデリング,シミュレーション,ロボット実機実験を組み合わせた構成論的アプローチにより,このムカデの運動パターンの遷移に内在する制御メカニズムの解明を目指した. 初年度(平成29年度)の研究実績を以下に具体的に示す.まず,ムカデの多様な運動のキネマティクスデータを収集するため,さまざまな環境条件下で行動観察実験を行い,ハイスピードビデオカメラを用いて撮影した.その結果,脚運動と胴体の屈曲運動の活用度合いのバランスは,脚の接地感覚情報に基づく局所センサフィードバックによって変化している可能性が示唆された.本知見は,歩行-遊泳間の運動パターン遷移を再現しうる自律分散制御則の構築において重要な役割を果たすと考えている. また,ムカデの歩行運動における脚間協調メカニズムに関して,数理モデルの構築,シミュレーションによる検証を行った.これまで,ムカデが種により異なる足並みの疎密波の向きを示すことは,脚間協調制御則を構築するうえで大きな障害となっていたが,本研究では,状況に応じて足並みの疎密波の向きを変化させることのできる特異な種(セスジアカムカデ)に着目することで,同一の制御則で双方向の足並み疎密波を実現しうる数理モデルの構築に成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究実施計画は,行動観察実験による歩行・遊泳運動のキネマティクスデータの収集と数理モデリングへの着手であった.行動観察実験では,キネマティクスデータの蓄積のみならず,脚運動と胴体の屈曲運動の活用度合いの変化に内在する制御メカニズムの抽出に資する振る舞いを観察することができており,良好な進捗である.また,数理モデリングにおいては,歩行運動における脚間協調制御に関して,足並みの疎密波の向きを状況に応じて変化させることのできる自律分散制御則の構築に成功しており,大きな進展があったと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,数理モデリングを引き続き進めるとともに,検証用ロボット実機のプロトタイプ製作に着手する.数理モデルにおいては,本年度構築した歩行運動モデルをベースに,行動観察実験で得た知見をもとに歩行-遊泳間の運動パターンの遷移を再現しうるモデルへの拡張を試みる.
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Research Products
(1 results)