2017 Fiscal Year Annual Research Report
環境低負荷触媒による生分解性脂肪族ポリエステルの実践的合成法の開発
Project/Area Number |
17J01046
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
齋藤 達也 北海道大学, 大学院総合化学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | リビング重合 / 生分解性高分子 / 脂肪族ポリエステル / 開環重合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、カルボン酸アルカリ金属塩を用いた環状エステルの開環重合法を確立し、実践的な生分解性高分子材料の合成へと展開することである。これを達成するため、本年度は、カルボン酸アルカリ金属塩を用いた各種環状エステル類の開環重合法の学術的体系化を図った。具体的には、有機酸の構造とアルカリ金属種の様々な組み合わせにより、触媒の酸・塩基性度や溶解性などを調節して環状エステル類の重合を行った。モノマーには、ラクチドや 4,6,7 員環ラクトン類、環状カーボネートおよび環状エステルエーテルを用いた。 その結果、酢酸ナトリウムを触媒としたL-ラクチドの開環重合法を確立し、生分解性高分子であるポリ乳酸の合成を達成した。また、本合成手法は、反応条件や触媒構造の調節などにより、多種多様な生分解性高分子材料の合成に対しても有効であった。 また、生成したポリマーの構造は 1H NMR、SEC および MALDI-TOF MS 測定により解析し、開始末端には、使用したアルコール開始剤残基を有する構造明確なポリマーが得られていることが判明した。さらに、動力学的解析により、本重合系はリビング的に進行することが明らかになった。また、塩基性度の異なる種々のカルボン酸塩を用いて、L-LA の重合や、モデル化合物との FT-IR 測定を行うことで、本重合系は末端アルコールとモノマーの両方を同時に活性化する二重活性化機構で進行することが示された。 本研究成果は、スズなどの金属触媒が用いられてきた従来の生分解性高分子材料の合成法に対し、金属の毒性への懸念なく合成可能な手法である。また、安全かつ安価な合成手法であるため、今後ますます需要の高まる生分解性高分子材料の合成手法として非常に有望である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に沿い、カルボン酸アルカリ金属塩を用いた各種環状エステル類の開環重合法の学術的体系化に成功した。すなわち、有機酸の構造とアルカリ金属種の様々な組み合わせにより、触媒の酸・塩基性度や溶解性などを調節し、各種モノマーと触媒構造の組み合わせに応じた重合挙動の相関を解明した。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目に、本重合系を実用性の高い生分解性高分子材料の合成法として展開する。1年目の検討により、特に有効であると判明した触媒に対して、使用する溶媒および触媒量の削減や重合温度の最適化を徹底的に行い、合成プロセスの低コスト化と省エネルギー化を図る。触媒の水分や酸素などによる耐性も同時に検討する予定である。また、以上で得られた知見を統合し、高付加価値な生分解性高分子材料の開発へと応用する。具体的には、再生可能資源由来モノマーを中心としてポリウレタン材料や熱可塑性エラストマーなどを設計・合成する。得られた生成物に対して、各種熱分析や機械特性試験、生分解性試験に加え、材料のミクロ構造解析のため広角・小角X線散乱測定や電子顕微鏡観察を行う。
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Research Products
(5 results)