2018 Fiscal Year Annual Research Report
架橋反応を鍵としたミクロ相分離挙動の制御による非対称ラメラ構造の構築
Project/Area Number |
17J01057
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
渡部 航大 北海道大学, 大学院総合化学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | ミクロ相分離 / 非対称ラメラ / 架橋反応 / ブロック共重合体 / 小角X線散乱 / 小角中性子散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は目的の「非対称ラメラ状のミクロ相分離構造構築」を目指し、昨年度に見出した"相分離前の分子内架橋"によるアプローチを詳細に検討した。昨年同様、モデルブロック共重合体(BCP)としてポリスチレン-block-ポリラクチド(PS-b-PLA)を選択し、架橋点を有する PS を大希釈条件下において分子内で反応させた後、重合開始点からラクチドを重合することで PS ドメインが分子内で架橋されたPS-b-PLA(PS(cl)-b-PLA)を合成した。PS は架橋の導入率を変化させ、PLAブロックはPSブロックの2-10倍程度の分子量とすることで架橋密度と分子量が異なる一連のPS(cl)-b-PLAを得ることに成功した。続いて、一連PS(cl)-b-PLAが形成するミクロ相分離構造を小角X線散乱(SAXS)測定により詳細に解析した。なおSAXS測定については、昨年と同様にシンクロトロン(Photon Factory)のビームタイムを当該研究室で獲得し放射光を用いて行った。測定の結果、合成した一連のBCPはブロック間の分子量が大きく異なるにもかかわらず全てラメラ状のミクロ相分離構造(非対称ラメラ)を形成していることが判明した。本結果は、ミクロ相分離に関する一般的な知見では説明することができない現象であるため、シミュレーション等を駆使することでそのメカニズムについて今後さらに深く探求していきたい。当該研究室では初の試みとなる「中性子散乱実験」にも挑戦した。ビームタイム獲得のための申請書類作成、サンプル調整、ビームラインでの測定まで全てを自ら中心になって進め、非常に有用なデータを取得することに成功した。現在は得られたデータの解析に注力しており、上記の実験結果をサポートするデータとして執筆論文に組み込む予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、昨年度に見出した"相分離前の分子内架橋"によるアプローチを詳細に検討し、非対称ラメラの構築法確立を達成した。既に学術論文化に必要なデータを概ね揃えているため、進行状況は順調と言ってよい。また、当研究室では初経験となる中性子散乱実験にも挑戦し、この道に詳しい外国人留学生やビームライン担当者とも頻繁にディスカッションを行うことで技術・知識ともに大きく進歩していると考える。現在、さらに高度なシミュレーション解析などの分析技術取得に注力している。 研究成果の公表にも意欲的に努め、当該年度は1件の学術論文を投稿し、2件の国際学会で研究発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度は1年目で発見した「分子内架橋を用いたアプローチ」により非対称ラメラを構築する非常に効果的な手法を確立することができたため、当該年度はさらに詳細な実験データを収集し学術論文化することを第一目標とする。この後、当初予定していた「相分離誘起後の架橋による アプローチ」に挑戦したい。BCPとしてはこれまでと同様のポリスチレン-block-ポリラクチドを引き続き用い、刺激応答によるバルク中での架橋反応を検討する。 以上の二つのアプローチによって得られた非対称ラメラ構造については、透過型電子顕微鏡による相分離構造のイメージ化に加えて、リソグラフィーへの応用を志向して薄膜化サンプルの原子間力顕微鏡測定や片ドメインのエッチングなどを行う予定である。最終的には、垂直配向の条件において誘導自己組織化に適用することで確立した手法の実用性を証明する。また、他のモノマーからなるBCPとして、生分解性・生体適合性を有するポリエステル系BCPやリソグラフィー用材料として有望なケイ素含有BCP、剛直な主鎖を含むrod-coil型BCPなどへの適用を試みる。以上により、本手法の実用性及び普遍性を証明する。
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