2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J01075
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田森 宥好 東京大学, 大学院数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 極小表現 / 表現論 / 単純リー群 |
Outline of Annual Research Achievements |
実単純リー群の最も特異な表現である極小表現について研究している.本年度は以下で説明するように,(1)分類と(2)構成について研究した. (1)実単純リー群のユニタリとは限らない極小表現を分類した.正確には,零化イデアルがJosephイデアルとなる既約(g,k)加群が,既に知られているもので同型を除いて尽くされていることを示した.特に極小表現は,実単純リー環gが実または複素シンプレクティックリー環の場合にはWeil表現の既約成分とその複素共役表現のみであって,その他の場合には複素共役表現を除いて高々一つしか存在しない,特別な無限次元表現であることが分かる. 各々の極小表現に関する先行研究と今回の分類から得られる系として,極小表現のK-typeがpencil型である(一直線状に重複度1で現れる)こと,極小表現の(g,K)加群は全てユニタリ化可能であること,実ランクが3以上の群の極小表現を極小放物型部分群の表現へと制限しても既約なことが分かる. (2)小林俊行教授によって提唱された「極小表現の大域解析」では,極小表現を幾何的に構成し,群作用や表現空間の特別なベクトルや内積を具体的に式で書き下すことが重要となる.本研究では,旗多様体上のあるベクトルバンドルの滑らかな切断の空間を考え,それらの間の群作用と可換なある微分作用素の核空間として一般の実単純リー群の極小表現を実現する枠組みを与えた. 加えて,実単純リー群O(3,2n)(n>1)の極小表現に対しては,微分作用素や誘導表現のパラメーターを具体的に与え,核空間の極大コンパクト部分群の作用で有限な部分がどのような関数からなるかを具体的にGegenbauer多項式を用いて記述した.また,ある部分群の旗多様体の切断へと定義域を制限すると,その部分群の極小表現となるという現象を見つけた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の年次計画の目標である「O(3,2n),G2(2),F4(4)の極小表現の解空間モデルの構成」はG2(2)やF4(4)に対しては完全には出来てはいないが,他の単純リー群の極小表現に対しても成り立つ一般的な枠組みを与えた点と,G2(2)やF4(4)に対しては目処が立っている点から,計画は概ね順調に進展していると判断した.それに加えて,極小表現の分類という研究計画作成時には予期していなかった結果も得ることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
G2(2),F4(4)の極小表現の解空間モデルを構成する.さらに, ・O(3,2n)(n>1),G2(2),F4(4)の極小表現を構成する際に現れる,群作用と可換な微分作用素を旗多様体の幾何的な構造を用いて解釈できないか, ・構成した核空間として実現を手がかりにして,リー環の作用が高階のベクトル場として具体的に書けるような,実極小冪零軌道のLagrange部分多様体上のL2空間としての実現や,そこへの絡作用素の構成ができないかを考察する.
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