2017 Fiscal Year Annual Research Report
高周波単電子制御を用いた量子輸送ダイナミクスの研究
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17J01293
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
則元 将太 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | ファノ効果 / 単電子操作 / 単電子検出 |
Outline of Annual Research Achievements |
メゾスコピック系における量子伝導のダイナミクスを解明するにあたり、物理的描像が明瞭な単電子源を研究した。受け入れ研究室である大阪大学にはそのような研究をしておらずノウハウがないため、産業技術総合研究所と英国National Physical Laboratoryを訪問し研修を受け高周波を用いた測定について実地を以って習得した。以後、産業技術研究所における研究、National Physical Laboratoryにおける研究、大阪大学における研究の順に述べてゆく。 産業技術研究所において、量子ドットの保有する電荷数の変化を高速で検出する研究に取り組んだ。単一電子遷移のダイナミクスを直接的に解き明かすことが可能であり、フィードバック制御を行うことで非常に精度の高い電流源を実現させることが可能になる。研究員の指導の下、サンプルホルダの回路設計や素子作製・測定を行い、高周波信号の反射を用いて電荷遷移を検出することに成功した。この測定の際に二重量子ドットにおけるファノ効果という現象を観測し、論文執筆を行った。現在本論文は査読を受けている最中である。 National Physical Laboratoryは単電子操作の研究において、世界でも最先端の研究を行っている。最先端の技術を習得すべく、伝導電子の波動関数の波束を直接的に測定可能な二粒子干渉実験に取り組んだ。このためには、二つの単電子源から放出される電子のエネルギーとタイミングがそろう必要がある。NPL所属の研究員の指導の下、測定系の作製、プログラミングなどを行い、放出された電子の分光測定と放出タイミング及びそれらの同期を行った。 大阪大学ではこれらの経験をもとに、自身が構築した測定系の評価のためのデバイス作製の準備を行った。行ったことは、フォトリソマスクの作製と微細構造を作りこむためのエッチング技術の確立である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一年目の目標は、単電子デバイスの作製とその評価であった。これらの目標はその全てを大阪大学でなされたわけではないが、おおむね達成された。また、申請当初には予定されていなかった産総研における単電子デバイスの電荷遷移の検出も行った。以下、単電子デバイスの作製、単電子デバイスの評価、産総研における研究の順について述べる。 単電子デバイスの作製において酸化剤と酸を用いた微細構造のエッチングは、部分的な集中した腐食などが起こるため所望の構造を得ることができなく課題であった。従来の酸化剤と酸の混合液に基板を入れ腐食させるのではなく、酸化剤と酸に基板を交互に入れることで所望の構造を得ることができるようになった。この背景には産総研で培われた薬品に関する知識が大きな寄与をしている。この技術を用いてデバイス作製して次年度の研究を行う。 単電子デバイスの評価には、分光測定と放出タイミングの測定が行われる。大阪大学では上記のサンプル作製の難点が早々に解決しなかったのもあり、NPLにて確立された世界最先端の技術を学ぶことにした。単電子源の分光測定と実時間測定についてだけでなく、サンプルホルダやデバイスの設計思想、プログラミングなど高周波測定技術と良い研究環境に関して学習した。 産総研では研究実施概要で述べたように、量子ドットにおける電子遷移の検出を行った。この研究で高周波回路の設計や共振回路、高周波回路において気を付けることを学習した。測定結果の一部を論文にまとめ投稿し、現在査読を受けている。論文執筆のため、ほかの事項について進行に遅れが出た。
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Strategy for Future Research Activity |
新しく開発したデバイス作製法とNPLで習得した分光測定を用いて、デバイス作製とその評価を行う。実時間測定には非常に高い精度で同期した高周波信号発生器が必要となるため、現状の測定装置ではとても実現不可能なことがNPLでの経験で分かったためである。NPLにて動作方法をすでに習得済みの単電子デバイスを用いて、すでに構築した測定系の評価を行う。確認事項は、高周波を単電子デバイスに送り単一電子を操作することができたか、また生成された電流を自作したIVコンバータで測定することができるか、放出電子の分光測定を行い放出された電子のエネルギー分布を測定することである。 単電子デバイスの動作を確認した後、二つの単電子源を用いた二粒子干渉実験を当初予定していた。しかしこれには高精度に同期した高周波信号発生器が必要となり、これらは非常に高価なため別の研究目標を定めることにした。それは、位置と運動量の不確定性に着目した単電子デバイスの分光測定である。分光測定には高周波信号源一台と定電圧源数台のみが必要なので、追加の装置を購入する必要がないためである。この測定を行うためにはデバイス構造を測定系確認用のデバイスから一新する必要があるため、実際にサンプルを作製したときに気が付いた不満点を解消した新しいフォトリソマスクを設計する。この測定を通して量子力学において重要な共役な物理量の不確定性が単電子源において実現しているのか調べる。
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Research Products
(6 results)