2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J01410
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
菅野 智成 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | モノリス / ポリ乳酸 / ステレオコンプレックス |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、足場材料や分解可能フィルターとして応用が期待されているポリ乳酸(PLA)多孔質体(モノリス)の高機能化を目的に、主に以下Ⅰ・Ⅱのアプローチを行った。Ⅰでは、3元溶媒を用いた熱誘起相分離法により相分離挙動を制御し、テーマⅡの前段階としてポリ(L-乳酸)(PLLA)モノリスの精密な細孔制御を試みた。Ⅱでは、鏡像異性体同士であるPLLAとポリ(D-乳酸)(PDLA)をそれぞれ高温の混合溶媒に溶解させ、その後冷却する手法にて、ステレオコンプレックス結晶(sc)を含む、高い耐熱性と耐薬品性を持ったsc-PLAモノリスの生成を試みた。 Ⅰ:モノリス生成時の溶媒比を調整することで、モノリスの孔径および骨格径をマイクロからナノスケールまで制御することに成功した。また、系の相図を検討することにより、モノリス生成時の相分離挙動を明らかにした。この結果は、従来のPLAモノリスの作製法を大幅に簡易化するものであり、PLAモノリスの実用化を前進させるものである。 Ⅱ:PLLA/PDLA=50/50とすることで、sc結晶のみを含有するモノリスが得られ、融点が単体と比べおよそ50℃高くなった。また、PLLA/PDLA=50/50のモノリスでは、PLLAの良溶媒である1,4-ジオキサンに含浸させても溶解せず、形状を保ち耐薬品性が向上した。この結果は、実用材料としての価値の高さだけではなく、ステレオコンプレックス化によるモノリス材料の開発という点で学術的にも大変意義深い。 以上の結果は、学術雑誌へ論文掲載済みであり、また、この研究結果を国内外の学会にて発表し、昨年8月には日本-東南アジアバイオプラスチック共同研究拠点シンポジウムにて、今年3月にはエコマテリアル研究会にてそれぞれ発表賞を受賞した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初のプラン通り、一番の目標であった「耐熱性や耐薬品性に富むポリ乳酸モノリスの生成」に成功している。また、研究の過程で見出した生成手法を追求し、系の相図を検討することでモノリスの精密な細孔制御を可能にした。さらに、上記の研究成果は全て学術雑誌への論文投稿、学会発表を終えている。以上により、研究は順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初のプラン通り、ポリ乳酸モノリスと他材料との複合化を行う。PLLAモノリスにバクテリアセルロース(BC)やヒドロキシアパタイト(HA)など、他材料の複合化を検討し、その生成条件や物性を明らかにする。足場材料や分離媒体、さらには人工骨材料など、様々な用途へモノリスを応用するためには、このような他の材料を導入し、物性強化や機能付与をする必要があり、ブレンド化の成功によって更に多くの機能付与が将来的に可能となる。具体的には、 ①PLAモノリスにBCやHAなど、機能性材料との複合化を試み、その生成条件について前年度の研究成果をもとに探索する。 ②生成した複合化モノリスについて、物的特性の解析や内部構造観察を行い、現在実用化されている他の多孔質体と比較検討する。様々な分野へ応用可能なポリ乳酸モノリスの生成を目指す。 研究計画が想定以上に進行した場合は、ポリ乳酸モノリスを含む広義の多孔質体について、新たに機能性材料の創発を行う予定である。
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