2018 Fiscal Year Annual Research Report
日本社会における技能形成・評価メカニズムを通じた制度的不平等の研究
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17J01483
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小川 和孝 慶應義塾大学, 法学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 社会階層 / 不平等 / 技能形成 / 教育訓練システム / 学校から仕事への移行 / 政策選好 |
Outline of Annual Research Achievements |
計画の第2年度は、在外研究として主にハーバード大学社会学部に滞在した。当該研究機関においては、東アジア社会研究の分野で著名なMary Brinton教授の受け入れの下、各種のセミナーやワークショップに参加した。また、現地の研究者とのディスカッションによって研究上の着想を得た。 在外研究機関中にも日本の研究機関・研究者とは適宜連絡をとり、いくつかの成果を発表した。まず、本研究課題は技能形成と不平等を一つのキーワードとしており、とりわけ幼少期に注目した社会階層と就学前教育の選択の関係に注目した研究を行った。 さらに本研究課題は、社会的不平等が生み出される上でのマクロな文脈を重視している。ある制度・政策が維持・再生産されているときに、人々がどのような社会経済的システムを望んでいるかという選好の問題は無視できない。こうした問題意識から、これまでの研究では教育・社会保障政策に対する人々の意識を探ってきた。その一環として今年度は、高校生の子どもを持つ母親をサンプルとしたパネルデータを用いて、子どもの高校卒業前後における母親の教育政策に対する意見の変化を分析した。 くわえて本研究課題では、パネルデータの分析が成果を出す上で大きな役割の一つを担っている。パネルデータは同一対象を追跡するデザインになっており、対象の脱落が不可避に伴う。それゆえ、脱落が推論に及ぼす影響の検討がしばしば必要になる。これを踏まえ、不平等研究の中心的な変数の一つである収入の推定と脱落の関係について分析した。アメリカの代表的なパネル調査の一つである、Panel Study of Income Dynamicsで蓄積されてきた手法を参考に、日本のパネル調査であるJapanese Life Course Panel Surveyを対象に検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第2年度は在外研究のために海外渡航をしていたものの、日本の研究機関・研究者とは適宜連絡をとり、いくつかの研究成果を発表した。 また、帰国後には在外研究の成果を踏まえつつ、東アジア社会の比較研究に関する受入研究者との共同プロジェクトを進めている。これが第3年度におけるさらなる成果に結びつくことが期待でき、研究が進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
第3年度は計画の最終年度であり、研究成果の発表に注力する。受入研究者とは在外研究からの帰国後に、東アジア社会の比較研究を共同して実施する計画を議論している。これには日本・韓国・台湾の3ヶ国が分析対象となり、この成果の発表を今後の研究実施の中心に据えてゆく。具体的には、日本のJapanese Life Course Panel Survey、韓国のKorean Labor &Income Panel Study、台湾のPanel Study of Family Dynamicsという3つのデータの分析が主眼となる。 成果の報告機会として第3年度(2019年度)は、6月に所属研究機関で開催される国際シンポジウム、6月に韓国で行われる東アジア社会の国際比較に関するワークショップ、8月にアメリカで開催される国際社会学会の専門委員会の研究集会を当面予定している。この他にも、国内の学会大会・インフォーマルな研究集会において、随時成果の報告を行う。
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