2017 Fiscal Year Annual Research Report
新規殺虫剤創製を目指した昆虫脱皮ホルモン受容体-リガンド間相互作用の分子機構解明
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17J01486
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
横井 大洋 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 脱皮ホルモン / アゴニスト / 構造活性相関 / QSAR / 不斉合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,テトラヒドロキノリン(THQ)型リガンドの脱皮ホルモン受容体に対する結合メカニズムを解明し,高活性化合物を分子設計することを目的とする.今年度は,THQ類縁体の構造展開と活性評価を行い,得られた結果を定量的構造活性相関(QSAR)の手法を用いて解析した.以下,方法および結果について簡単に述べる. 方法:以前に申請者が独自に確立した不斉合成経路に基づき,活性本体である(2R,4S)体のTHQ類を立体選択的に合成した.このとき,THQ類の部分構造のうち,ベンゾイル部およびアニリノ部の置換基を種々変換することで,40種の類縁体からなる化合物ライブラリーを得た.続いて合成した化合物の活性を,ヒトスジシマカ由来の培養細胞(NIAS-AeAl-2)を用いた受容体結合試験により評価した.標識リガンドである[3H]Ponasterone Aの結合を50%阻害する供試化合物の濃度 [IC50 (M)] を濃度応答曲線より算出し,その逆対数値であるpIC50を受容体結合親和性の指標とした. 結果:まずアニリノ部を変換した化合物に関してQSAR解析を行ったところ,メタおよびパラ位への置換基導入は立体的に不利であり,特にメタ位では親水性の置換基が活性を低下させることが明らかとなった.続いてベンゾイル部を変換した化合物に関するQSAR解析を行ったところ,電子求引基の導入が活性を向上させること,またパラ位の置換基には最適な長さが存在することが明らかとなった.この過程で,脱皮ホルモンの約2倍という強力な受容体結合親和性を有するTHQ類縁体を得ることに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,化合物の合成,活性評価,および構造活性相関の定量的解析を行うことができている.また,ここまでの成果をまとめた学術論文を現在投稿準備中である.以上の点から,研究は順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究においてはまず,脱皮ホルモン受容体へのTHQ類の結合様式を明らかにする必要がある.当初の計画では,計算化学的手法のみを用いて結合様式を予測する予定であった.しかし,今年度実施した予備的な計算結果から,当研究室で利用可能な計算資源ではそのような計算は困難であることが示唆された.そこで当初の計画を変更し,X線結晶構造解析などの実験的手法を用いて結合様式を決定することを予定している.これには,今年度見出すことができた,脱皮ホルモンの約2倍の結合活性を有するTHQ類縁体を用いる.THQ類の結合様式を解明することができれば,それに基づいて計算化学的手法を駆使した分子設計を行い,候補化合物の合成および活性評価を実施する.
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Research Products
(2 results)