2017 Fiscal Year Annual Research Report
Slip behavior of plate-boundary faults inferred from thermal maturity of carbonaceous material
Project/Area Number |
17J01607
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
金木 俊也 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
|
Keywords | 地震 / 摩擦発熱 / 炭質物 / 熱熟成 / メカノケミカル / 昇温速度 |
Outline of Annual Research Achievements |
地震時に解放されるエネルギーの大部分は断層面での摩擦発熱として消費され,断層面での温度上昇および様々な物理化学反応を誘発する.地震時に発生する摩擦発熱量は,剪断応力や滑り距離といった断層滑りパラメータに依存するため,断層面での摩擦発熱量を推定することは,地震のエナジェティクスや滑り挙動を理解する上で非常に重要である.以上の背景から本研究では,断層岩中に存在する炭質物が最高被熱履歴に対して不可逆的な有機化学反応を起こすことに着目し,炭質物の熱熟成度から過去のプレート境界で発生した地震の滑り挙動を解明することを目的としている. 平成29年度は,天然の断層を模擬した試料について摩擦・加熱実験を行い,摩擦実験地震時の剪断が炭質物の熱熟成過程に及ぼす効果(メカノケミカル効果)の定量的な検証を行った.その結果,剪断ダメージを受けた炭質物は通常より低い温度で熟成度を上昇させることが明らかになり,地震時の剪断は炭質物の熱熟成反応を促進することが確認された.これは炭質物の熱熟成過程におけるメカノケミカル効果の重要性を世界で初めて実証したことを意味している.またその研究過程で得られた知見から,炭質物の熱熟成過程における昇温速度の影響の重要性についても実験的に検証を行った.その結果,高い昇温速度は炭質物の熱熟成反応を抑制することが明らかとなった.これら二つの効果の実験的検証によって,今後の炭質物を用いた断層温度計ではより正確な温度を推定することが可能となることが期待される.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「炭質物の熱熟成度から過去の地震時の滑り挙動を推定する」という本研究の目的に対し,本年度の成果によって断層面の最高温度推定を行う際はメカノケミカル効果を考慮する必要があることが確認された.これらの成果は国際学術雑誌Geophysical Research Letterに受理・掲載されており,当初の研究計画を十分に満たすものである.さらに,昇温速度が炭質物の熱熟成過程に及ぼす影響という新たな知見を得ることができたことから,当初の計画以上に進展していると言える.
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画では,今後様々な断層において炭質物の熱熟成度を用いて最高温度・滑りパラメータの導出を行う予定であった.しかし当年度の研究から,炭質物の熱熟成度はメカノケミカル効果・昇温速度の効果,さらには炭質物の初期熟成度の三つの効果によって大きく影響を受けることが予想される.よって今後の研究では,まずこれらの効果が組み合わさった場合,炭質物の熱熟成過程にどのような影響を及ぼすかを実験的に検証する.また,炭質物の熟成度それ自体が断層面での摩擦発熱量に及ぼす影響についても精査していく予定である.
|