2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17J01793
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
湯淺 史朗 一橋大学, 大学院経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | 合理的バブル / 動学的一般均衡 / 金融ショック / バブル潰し政策 / 総量規制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,資産価格バブルの成長・崩壊と経済全体の相互の関係を説明できるマクロ経済モデルの構築を目的としている. 本年度はバブルの崩壊をマクロ経済環境の変化によって説明するモデルの構築に取り組み,金融市場の逼迫度の変化がバブルの崩壊を引き起こすモデルを提案した.このモデルを用いて,金融市場の逼迫度が増加するような経済環境の変化がバブルの崩壊を引き起こすことを理論的に示した.この結果は,日本の平成景気時に不動産ブームを沈静化させるために大蔵省によって行われた総量規制政策のような,金融市場を引き締めることによって資産価格バブルを破裂させる政策に動学的一般均衡理論の観点から理論的基礎づけを与えるものである.また,金融市場の逼迫度が減少するような経済環境の変化もバブルの崩壊を引き起こし得ることを理論的に示し,そのような変化によってバブルが破裂した場合のその後の経済成長率の減少は,金融市場の逼迫度が増加することによって破裂した場合と比較して軽微であることをシミュレーションによって示した.この結果は従来の金融市場を引き締めることによるバブル潰し政策より,経済成長率の観点から見て,より望ましいバブル潰し政策が存在する可能性を示唆している.従来の理論的裏付けの無いバブル潰し政策の常識を覆すという点において重要な結果である.このように本年度は「バブル崩壊と金融市場の逼迫度の変化の関係」を明らかにしただけでなく,政策的含意にまで言及できたという点において期待以上の進展があった.これらの研究結果をFinancial Shock and Burst of Rational Bubbleとしてまとめ,ワークショップにおいて研究報告を行った.この研究報告において多くのマクロ経済・資産価格バブルの専門家から有意義な意見を得ることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,上述したようにバブル崩壊の原因および経済全体への影響を分析できるマクロ経済モデルを構築した.本研究の目的が「バブルの成長・崩壊と経済全体の相互の関係を説明できるマクロ経済モデルの構築」であることを鑑みると,本年度でバブル崩壊に関してのモデルの構築が完了しているということは,目的のおよそ半分は達成できていることを意味する.当該研究課題採択期間のうちの半分が経過した時点で目的の半分を達成できているという点から,研究はおおむね順調に進展していると評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
研究方法を変更し,バブルの崩壊を説明するマクロ経済モデルを作成した後に,そのモデルにバブルの発生を説明できる要素を導入するという方法を採用する. 今後はこれまでに構築したモデルをベースとした,バブルの発生,成長を説明するマクロ経済モデルの構築に取り組む.
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