2017 Fiscal Year Annual Research Report
活動的固体天体の内部活動解明とハビタビリティの考察
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17J01798
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
庄司 大悟 東京工業大学, 地球生命研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 氷衛星 / テティス / 土星 / 火山灰 / ディープラーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
1.テティスの地形形成メカニズムについて テティス表面にはIthaca Chasmaという長さが約2000kmにも及ぶ巨大な渓谷が観測されているが、このサイズの衛星に、なぜこのような巨大な割れ目が形成されたのかについてはよく分かっていない。テティスの軌道は、土星の潮汐変形によって生じたトルクによって軌道が時間とともに広がっていくが、土星のコアが粘弾性であると仮定して、衛星の軌道変化を計算した結果、テティスは過去にディオーネと2:1の共鳴に入っていた可能性があること、また、テティス内部に約100GWほどの熱が発生することが判明し、これらは観測結果とも整合的であった。さらにこの共鳴が発生する時期、軌道が比較的短時間で外側に広がっていることも分かった。そのため、ディオーネとの2:1共鳴によって内部が加熱されると同時に、軌道の広がりによってテティスの形が変化することで、巨大な渓谷が発生したのではないかと考え、表面に発生する応力の力と向きを計算したところ、力の向きと大きさが観測された割れ目の向きと整合的であった。
2.火山灰の形状分類について 粒子形状の判定は専門家による目視か、形状をパラメータ化することで行われることが多い。しかし、専門家による判定では、判定した人の主観に依存し、パラメータによる解析では、パラメータの選択が課題となる。そこで、近年画像認識において成果を挙げているディープラーニングを用いて、火山灰の形状を分類することを試みることにした。まず、4つの特徴的な形状クラスを設定し、一つの形状のみを持つ粒子だけを、ネットワークに学習させた。その結果、ネットワークは90%以上の精度で火山灰の形状を判定することに成功した。その後、この訓練されたネットワークを用いて、不明瞭な形状を含む全粒子で、4つの形状である確率を算出し、その確率の割合で粒子の形状を分類した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題研究である氷衛星の内部活動と地形形成に関しては、テティスの渓谷と軌道進化を考察することができ、共著者として論文を投稿する段階に至っている。また、火山灰の形状分析という、課題研究とは異なるテーマにも取り組み、こちらも論文投稿の段階にある。そのため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
受け入れ先である東京工業大学では現在、詳細な土星系衛星の軌道進化を解析している。今後は、その結果をもとに、地形の形成年代を見積もる予定である。また、火山灰の分析も引き続き継続する予定で、機械学習を用いた区分けの方法を検討しているところである。
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