2017 Fiscal Year Annual Research Report
ホスファブルック転位による炭素アニオン生成を鍵とする新規不斉触媒反応系の開拓
Project/Area Number |
17J01945
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
青木 拓磨 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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Keywords | ホスファブルック転位 / 芳香族求核置換反応 / 有機化学 / 有機合成化学 / 触媒化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
[1,2]-ホスファブルック転位は、α 位にホスホノ基を有するアルコキシドにおいて、ホスホノ基が炭素原子上から酸素原子上に転位し、α 位に酸素官能基を有する炭素アニオンを生じる転位反応である。この転位の大きな特徴は他の方法では発生困難な炭素アニオンを容易に発生させることができることである。この特徴を最大限に活かした触媒反応の検討を行っている。これまでは、ブレンステッド塩基触媒による求核付加反応の反応探索を行ってきた。その一方で、今回我々は、この炭素アニオン種の発生法を求核付加反応とは異なる触媒反応系へ利用することを考えた。具体的には、求核付加反応と並ぶ炭素アニオンの代表的な反応である、求核置換反応に着目し、触媒的な芳香族求核置換反応(SNAr反応)の開発を行うことにした。SNAr反応は、基質に対し電子不足芳香環を導入する有用な方法論である。最近では、相関移動触媒を利用した不斉SNAr反応も多く報告されている。しかし、それらの反応は反応の性質上、化学量論量の塩基を用いなければならない点が課題として挙げられる。また、これまで報告されている反応の多くは酸性度の高いプロトンを有する化合物から生じるエノラートを求核剤として用いた反応となっており、求核剤の拡充が強く求められる。そこで我々は、これまでの方法論では発生させることが困難である炭素アニオンを[1,2]-ホスファブルック転位により発生させ、触媒的SNAr反応へ適用することを考えた。 こうした背景の基、詳細な反応条件の検討を行った結果、適切な触媒及びシリルホスファイト存在下、プロ求核剤としてα-ケトエステル、求電子剤として電子不足芳香族フッ化物を作用させたところ、触媒的に反応が進行し、電子不足芳香環が導入された生成物が得られることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた、ホスファブルック転位によるホモエノラート等価体の発生を利用した不斉求核付加反応の開発は検討段階にある。その一方で、本転位を利用した新たな触媒反応系を見出すことができたことは大きな進展であるといえる。また、不斉触媒反応の検討も行い、基質に制限はあるものの比較的良好なエナンチオ選択性を獲得できている。このように現在までに得られた知見から、今後のさらなる展開が期待できることから、「研究の進捗状況」として「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画していたホスファブルック転位によるホモエノラート等価体の発生を利用した不斉求核付加反応の開発に関しては、引き続き検討を行っていく。その一方で、本転位を利用した触媒的芳香族求核置換反応においては、これまでの検討の過程で本手法の有用性が明らかとなってきている。引き続き検討を行っていき、不斉触媒化及び本方法論を利用した新たな反応系の探索を行っていく。そして、これらの方法論を確立することで、有機合成に新たなアプローチを提供することを目指す。
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Research Products
(4 results)