2018 Fiscal Year Annual Research Report
「想像力」概念の技術論的展開― その可能性と限界に関する京都学派を軸とした考察
Project/Area Number |
17J01949
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
古賀 高雄 神戸大学, 人文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | 想像力 / 構想力 / 三木清 / ポスト現象学 / 技術哲学 / 原子力 / ピーター=ポール・フェルベーク / マーク・ジョンソン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、原子力の問題に即して、技術と人間の相互作用を視野に入れた「想像力」概念の展開を試み、技術における「想像力」の可能性と限界を示すことである。(1)第24回世界哲学大会で発表を行い、三木清が『構想力の論理』で試みていたように、「構想力」(=想像力)という観点を導入することで、その対立を解消する可能性について論じた。この着想を、特にポスト現象学の批判性の希薄化の問題と絡めて展開し、論文「技術哲学の批判性―フェルベークにおける「技術に同行する倫理」をめぐって」を、雑誌『哲学の門:大学院生研究論集』(日本哲学会)に掲載し、優秀論文賞を受賞した。さらに、日本現象学・社会科学会第35回大会において、「技術的媒介と想像力―ポスト現象学における想像力の位置づけ―」というタイトルで発表を行い、マーク・ジョンソンが提示する「道徳的想像力」の概念を導入することをつうじて、ポスト現象学の枠組みを拡張することを試みた。 (2)前年度に行った福島でのフィールド・ワークに基づいて、目に見えない放射能との関わり方について論じたものである。さらに、この発表を発展させる形で、論文 ”The Problem of Moral Imagination in Respect to Radioactivity: Reflecting on the Situation in Fukushima” を発表し、放射能をめぐる科学的不確実性とも相俟って、それぞれの人びとの「道徳的想像力」が十分に収斂することがないまま、福島の状況に混乱をもたらしていることを論じた。 (3)パリ・ナンテール大学で、三木清の技術論について発表する機会を得た。この発表では、三木の「構想力」概念を物質化された行為の形を形成する働きとして解釈し、そのようにして形成される技術は、身体性を介して行為の構造に介入するものであることを論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、とりわけ現代技術哲学(特にポスト現象学)の検討に関して大きく進展し、日本哲学会『哲学の門:大学院生研究論集』優秀論文賞も受賞した。また、原子力技術についての検討も、「道徳的想像力」という新たな観点から分析することができ、一定の進展があった。さらに、三木清の『構想力の論理』を中心とした京都学派の技術論に関しても、パリ・ナンテール大学で発表する機会を得るなど、進展が認められる。以上の理由より、本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度の研究では、(1)前年度に引き続き、「想像力」という観点から現代技術哲学の検討を行う。さらに、(2)リスク社会論及び世代間倫理の観点から、技術に関わる「想像力」の可能性と限界の検討を行う。それと並行して、(3)これまで検討してきた現代技術哲学の知見に配慮しつつ、三木清の『構想力の論理』を中心に、京都学派の技術論の積極的意義を吟味する。これらを踏まえたうえで、博士論文を作成する。
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